レポートNo143 2015.2.18  <倉林 勝>

鞄・袋物市場

矢野経済研究所の調査によると、2013年の鞄・袋物市場規模は前年度比107.5%の1兆56億円

となり、3期連続で増加し1兆円台を回復した。家計調査から見ても衣料品や靴を除く、ファッション関連項目は順調な推移を見せ、特に鞄は好調な動きだ。百貨店売上をみても、鞄等を含む身の回り品は全体売上、衣料品売上に比べて順調である。また、アパレル各社を見ても衣料品に比べ雑貨関連の伸び率が高い。衣料品市場が減少傾向にあるなかで、鞄・ 袋物市場の拡大は続きそうだ。


(A)矢野経済研究所調査サマリー

矢野経済研究所は毎年「鞄・袋物産業年鑑」を発行する。

矢野経済の<鞄・袋物>とは、鞄は主に男性仕様の大型のもの、袋物は主に女性仕様のハンドバックや小物入れを指し、「ビジネス鞄」や「旅行用鞄」、「ハンドバック」などに加え、「財布・革小物類」や「ベルト」などを含んでいる。

 

①2011年度(H23)サマリー

*2011年度の国内鞄・袋物市場規模は前年度比101.7%の9051億円と、2001年度以来10年ぶりに拡大した。

良いものを長く使いたいと考える消費動向の高まりによる高額商品需要の回復、旅行者数増加に伴う旅行かばん需要の高まり、ビジネスカジュアルの広がりにともなうメンズ向けトートバッグの好調さが要因と見る。

分野別に見ると、インポートブランド市場が前年度比4.0%増の3878億円と大幅に増加した。高額商品を買い控えていたことの反動や良いものを長く使いたいとする消費傾向が高まり、顧客が戻り始めていることが要因と見ている。一方、ライセンスブランド市場は前年度比1.7%減の1317億円。主要売場である百貨店業界が不調から脱し切れていないことがマイナス要因となった。

インポートブランド3878億円(構成比42.8%)、ドメスティックブランド3856億円(42.6%)、ライセンスブランド1317億円(14.6%)となった。

 

②2012年度(H24)サマリー(2013年7~9月調査)

*2012年度の国内鞄・袋物市場規模は前年度比103.4%の9358億円、2011年度、2012年度と2期連続で増加。

2012年度の国内鞄・袋物の市場規模は、小売金額ベースで前年度比103.4%の9358億円であった。東日本大震災後の消費傾向の一つである、良いものを長く大事に使いたい消費の嗜好が強まり、顧客が戻り始めているインポートブランドが好調となった。また、男性向け、女性向けともに、新たな提案が行われている商品で、好調な商品が見られる。

分野別に見ると、インポートブランド市場は前年度比7.3%増の4162億円(構成比44.5%)、ドメスティックブランド市場は前年度比1.0%増の3894億円(41.6%)、ライセンスブランド市場は前円度比1.1%減の1302億円(13.9%)となった。

*鞄・袋物メーカー、卸売業、輸出入業者の約6割が、原材料の高騰や円安の進行を理由に2014年の消費増税前に値上げを実施

鞄・袋物メーカー、卸売業、輸出入業者54社に対し、2013年の商品価格の変動状況について尋ねたところ、「2013年の上期(1~6月)に価格を引き上げた」が24.1%、「下期(7~12月)に価格を引き上げた・引上げを予定」が35.2%を占め、2013年度中に価格を引き上げる企業が約60%を占める結果となった。

 

③2013年度(H25)サマリー(2014年9~12月調査)

*2013年度の国内鞄・袋物市場規模は前年度比107.5%の1兆56億円、市場規模は1兆円台を回復

2013年度の国内鞄・袋物の市場規模は、小売金額ベースで前年度比107.5%の1兆56億円であった。景況感の改善による国内消費の回復と、訪日外国人観光客の増加に伴うインバウンド需要の拡大により、インポートブランドを中心とした高額商品が好調な売れ行きであったことから、市場規模は1兆円台に回復している。国内の流通小売業各社は、こうしたインバウンド需要をより獲得するために買い物をし易い環境を整えており、2014年度の国内鞄・袋物市場は、小売金額ベースで前年度比106.7%の1兆728億円になると予測する。

*インポートブランド市場は3年連続で市場規模拡大

2013年度のインポートブランドの市場規模は、小売金額ベースで前年度比115.0%の4786億円と推計し、3年連続で市場規模が拡大した。インポートブランドは、日本人だけでなく訪日外国人にも人気が高く、なかでも購買意欲の高い中国人富裕層が、銀座や心斎橋などの都市部の百貨店やインポートブランドの路面店で単価の高いアイテムを購入していることも、インポートブランドの売上拡大につながっていると考える。

 

(B)家計調査からみる動向

家計調査の調査項目には衣料品(下着を含む)・靴などを別にしてファッション関連項目として帽子、ネクタイ、マフラー・スカーフ、手袋、靴下類、傘、かばん類、装身具、腕時計、他の身の回り商品がある。

これらの中から、帽子、マフラー・スカーフ、手袋、かばん類(ハンドバック、通学用かばん、旅行用かばん、他のバック)、装身具、他の身の回り用品の動向をみる。

 

各項目区の詳細は以下である。

帽子・・・素材を問わない。交通安全帽、レインハットを含む。

マフラー・スカーフ・・・素材を問わない。ショール(肩掛け)、ストール、女子学生服のスカーフ・リボンを含む。

手袋・・・軍手を含む。

ハンドバック・・・大人、子供用及び性別を問わない。セカンドバック、ショルダーバック、ポシェット、和装用バックなどを含む。

通学用かばん・・・ランドセル、肩掛けかばんなど。

旅行用かばん・・・旅行用のかばん限る。オープンケース、スーツケース、ボストンバック、トランクなど。

他のバッグ・・・ハンドバック、通学用かばん、旅行用かばんに分類されないかばん類。紙製品は除く。アタッシュケース、ぞうり袋、手提げ袋、和・洋衣装ケース、ポケッタブルバック、バスケット、スクールバック、レッスンバックなど。

装身具・・・貴金属類などの装飾を目的として身に付けるもの。指輪、カフスボタン、ブローチ、イヤリング、ネックレス、ブレスレット、装身具用造花、リボン類、かんざし、ヘアバンド、帯留、宝石、貴金属類など。

他の身の回り用品・・・装身具、腕時計に分類されない身の回り用品及び服飾品。喫煙具(ライター、パイプ、灰皿、フィルター)、禁煙具、杖、ステッキ、ハンカチーフ、扇子、コンパクト、鞄のカバー、傘カバー、定期入、名刺入、財布、根づけ、時計のバンド、くさり、サングラスなど。

(ベルトは他の被服のその他の項目に入る)

H20年(2008年)のリーマンショック、H23年(2011年)の東日本大震災等で家計支出の伸びは低下傾向にあるが、婦人用洋服や婦人用シャツ・セーター類はさらに大きな低下傾向を見せる。

その中にあって、ファッション関連品は比較的順調な増加傾向にある。H17年対比、H25年対比(前年比)で共に増加している項目は手袋とかばん類の2項目である。また、年間消費金額はかばん類、装身具、他の身の回り用品の順に高い。

かばん類の各項目を見ると、ハンドバックはH17年対比ではマイナスだが矢野経済の発表通り順調に回復しているようだ。通学用かばんはランドセルの高単価傾向が伺え、旅行ブームで旅行用かばんも順調だ。

ハンドバックはかばん類の約55%を占め、この分類の主要商品である。

推定市場規模は、H25年3月時点の国内世帯数5560万世帯を単純に掛け合わせた金額である。矢野経済の市場規模と大きな差があるが、矢野経済に含まれるベルトや定期入、名刺入、財布等が含まれていない点が大きな差異になっていると思われる。

他の専業小売店と同様に業種店は減少するが、残った店はマズマズの年商のようだ。

鞄・袋物市場規模から見ると専業業種店の比重が下がり、百貨店や衣料小売店などの複合的な店で販売されているのだろう。

卸売業も小売業と同様に事業所数の減少、年間販売金額の減少が続いている。業界の流通経路に変化が及んでいる。

以前は(株)サザビーリーグも上場していたが、現在は2社のみが上場している。(株)サザビーリーグのHPによるとH25年3月期の連結売上高は914億円である。

鞄・袋物市場規模が1兆円といわれるなかで、専門店や卸業の売上規模は小さいようにも感じる。

これらの商品群は、百貨店、アパレル専門店、インターネット販売等のチャネルが大きいのだろう。

衣料品が低調のなかで、身の回り品は順調な推移を見せる。

百貨店協会の分類は下記である。

紳士服(紳士服・洋品)・・・紳士服、服地、ワイシャツ・シャツ、セーター、肌着、ネクタイ、靴下、ハンカチ、帽子、手袋、マフラー、毛皮等紳士用衣料品

婦人服(婦人服・洋品)・・・婦人服、服地、ブラウス・シャツ、セーター、肌着、靴下、ハンカチ、帽子、手袋、スカーフ・マフラー、毛皮等婦人用衣料品

身の回り品・・・靴、アクセサリー・装身具、ハンドバック・鞄、ベルト、財布・革小物、傘、旅行用品、裁縫手芸用品、喫煙具等

高島屋、JフロントリテイリングはH26年2月決算、三越・伊勢丹、H2O、丸井はH26年3月決算。

総売上高はそれぞれの百貨店部門の売上、丸井は小売り関係の売上。

衣料品には紳士服・洋品、婦人服・洋品、子供服・洋品、その他衣料品(呉服、浴衣、和装小物、寝具・寝装品、タオル等)の合計。丸井は百貨店協会外のため衣料品にスポーツ用品が含まれる。また、身の回り品も多少の違いがある。

 

総じて衣料品に比べ身の回り品の伸びが高い。身の回り品構成比は丸井、H2O、高島屋の順に大きく、売上高順では高島屋、丸井、三越・伊勢丹の順である。

推定(鞄・袋物売上規模)は、身の回り品を靴、アクセサリー・装身具、ハンドバック・鞄・ベルト・財布・革小物を全体の1/3ずつと見て単純に計算した参考値である。この金額から推定すると、(株)サックスバーホールディングスが国内最大手の売上のようだ。

 

(E)アパレル専門店

アパレル専門店は店舗業態別(ブランド別)の売上情報開示はあるが、商品別売上情報開示はユナイテッドアローズのように非開示の企業もある。年商500億円以上の開示された分をまとめる。

鞄・袋物等が入る項目を記し、単位は100万円とする。

 

専門店は総売上の伸び率より、雑貨関係の伸びが高い。

ネット関連でバック関係を検索すると、アマゾンには約36万8千点掲載され、楽天には欧米のブランドや国内のブランド別、あるいはアイテム別に検索機能がついている。

こうしてみると、鞄・袋物関係は幅広いチャネルで販売されているのだろう。

 

(F)卸売業界

かばん(鞄)と袋物は同じ売り場で売られることが多いが、業界の成り立ちが異なることから区分されている。

旅行かばんなどから発展したかばんは「学生用、ビジネス用、旅行用、スポーツ用などのかばん」、巾着袋などから発展した袋物は「ハンドバック、ショッピングバック、財布などの小物類」と分類される。

 

卸売業界は、卸売業者主導で商品の企画・開発を行うことが多く、卸売専業、製造卸売業、卸小売業に分かれる。卸売専業でも、自社で企画した商品を契約製造業者に委託生産する卸売業者が多く、製造卸売業に分類される業者が増加しており、卸売専業は減少傾向にある。また、企画機能を持たない卸売業者は、他社との取扱商品の差異化ができず、価格競争による収益減少に苦しんでいる。

 

かばん・袋物の小売業者は、かばん・袋物の専門店が大部分であったが、小売業者としてアパレル業界など他業種からの参入が見られる。大部分のアパレル小売業者はアパレル卸売業者経由でかばん・袋物を仕入れていることから、かばん・袋物卸売業者にとっては、販路拡大・商品販売額増加にはつながっておらず、逆に他業種卸売業者などのかばん・袋物取扱の増加による競合激化の影響が大きくなっている。

 

ショッピングセンターなどへ多店舗展開している小売業者と、商店街などに店舗を有し、売上が低迷している小規模・零細小売業との間に業績格差が拡大している。これに付随して、多店舗展開に対応できる体制・規模を持つ一部の卸売り業者と、小規模小売業者を主な取引先対象とする卸売業者との業績格差が拡大している。

ただ、多店舗展開している小売業者からの取引条件(買取から委託への変更、値引きなど)の要求は厳しくなっており、卸売業者は利益確保のため同業者と差別化できるとともに利益率の高い自社企画商品の開発が必要となってくる。

 

インターネット活用については、自らインターネット店舗を開設する卸売業者も増加しているが、販売商品を限定する、値引きをしないなど、既存取引先との関係悪化につながらない程度の取組が大部分で本格的な進出は少ない。

アマゾンなどの大規模なインターネット店舗が売上規模を増加させていることについては、これらインターネット店舗との取引を検討しているかばん・袋物の製造業者も存在しており、卸売業者にとって新たな販路となる可能性もある。

 

卸売業者の減少は今後も続くとみられており、結果として残った個々の業者の売上は、堅調ではないかと予想される。

ただ、消費増税に伴う消費意欲の減退や、総務省の「2015年までに小中学校の全生徒にデジタル教科書を配備する」方針によるランドセル市場の大幅な縮小など、経営環境の変化による市場縮小が危惧される。

(業界レポート参考)

 

ここ数年成長する、かばん・袋物市場では小売も卸も新たな変化のなかにいるようだ。

以前、ニューヨークで購入した財布を家内が気に入って長く使っているが、そのブランドは日本で販売されていない。しかし、インターネットを検索すると並行輸入と思われる商品がたくさんヒットする。

アマゾンや楽天のサイトをみると、この業界もネットの重要性が増しているようだ。

ブランド価値を認めさせるため、好立地に店舗を持ってネットで販売を活用するなどのケースも多いようにも見える。

衣料品市場が減少傾向にあるなかで、成長分野であるかばん・袋物市場は可能性が多いにありそうだ。

 

以上