レポートNo99 2014.1.16  <倉林 勝>

新春雑感

2014年は午年である。午は12進法の後半の始まりで、転換点などを表す。120年前の午年に日清戦争が勃発し、その10年後の日露戦争、さらにその10年後に第一次世界大戦が起きた。120年前の甲午の年は、まさに時代の転換点であった。平成も四半世紀を過ぎ、日本も大きく変わりつつあるが、なにやらきな臭い感がする。消費税増税が小売業の転換点となる可能性も秘める。


好天に恵まれ新しい年が明けた。有楽町の火事で新幹線等が遅れるなどしたが、大きな事故もなく落ち着いた三が日であった。

例年のごとく、成田山新勝寺をはじめ近隣の神社やお寺に詣で、昨年の無事を感謝し今年の無事をお祈りする。それぞれで「おみくじ」を購入するが、今年は3札とも「吉」であった。

三人吉三よろしく、「こいつぁ春から縁起がいいわえ」と行きたいところだ。

 

2014年は「甲午の年」である。「午」は12進法では前半が終わり後半から初めての位置にあって前後の交差する数を表す。そこから「午」は流れが変わり、「転換点」や「基準点」を表し、午前・午後を分かつ」正午」や、北極と南極を結ぶ「子午線」などにその意味が残る。今年が時代の大きな転換点になるのかもしれない。

120年前の1894年には李朝の圧制から農民による東学党の乱(甲午の乱)が起き、これを機に出兵した日清両国が衝突し日清戦争が勃発した。その10年後の1904年には日露戦争が始まり、さらにその10年後の1914年には第一次世界大戦が起きた。

朝鮮に出兵した日本は日清、日露の二つの戦争に勝利し、1910年には韓国を併合し、敗れた清朝は1912年に滅亡し、中華民国が成立する。

まさに120年前の「甲午の年」は日本にとってもアジアにとっても歴史の転換点であった。

今日、中国や韓国との間に冷たい風が吹き、なにやらきな臭い気配を感じずにいられない。

経済再生と福島原発正常化を優先課題とした、安倍政権はいつの間にか「戦後レジームからの脱却」を掲げた第一次安倍政権に戻ってしまったようだ。安倍首相は今年をワクワクした年にしたいというが、私はドキドキした年にならないことを祈るばかりだ。

 

平成も26年となり、平成も四半世紀が過ぎたことになる。

昭和64年(1989年・平成元年)1月7日から年号が平成に改められ、時の官房長官小渕氏が「平成」とかかれた額を掲げた姿を昨日のように思い出す。「平成」は史記の「内平外成」から引用され、「内外天地とも平和が達成される」との意味といわれる。

バブルの最中に平成に変わり、平成2年には東証株価がピーク時の約半分の2万円を割り、平成4年8月には1万4309円に下がりバブル景気は終焉した。

25年の間には米国多発テロや東日本大震災が起き、日本の金融危機や米国のサブプライムローン問題が発生するなど内外共に平らかな時代とはならなかった。

 

平成の初め頃から日本は長きにわたるデフレ経済に陥り、デフレ経済は平成24年12月26日の安倍政権に引き継がれた。

安倍総理はデフレ脱却をはかるための3本の矢からなる「アベノミクス」を発表し、日銀の量的緩和策により株価は上昇し円相場は下落した。日経平均株価は5月に5年5ヶ月ぶりに1万5600円台となり、円ドル相場も4年7ヶ月ぶりに103円台の安値を付け、日経平均株価は年末に年初来高値の1万5655円となった。年末の東証1部時価総額は463兆円と一昨年の12月末から208兆円も増加した。

家計消費も増加し、小売業売上高も増加する見込みだ。百貨店既存店売上も2年連続で増加見込みで、資産効果が見られるようになった。

インフレ目標2%は未だの感がするが、円安によるエネルギー価格や輸入原料の上昇などがあって、物価指数は総合指数が6月から、生鮮食品を除く総合指数が5月から、食料とエネルギーを除く総合指数が9月から上昇に転じ、2%には遠いが消費者物価は少しずつ上昇の気配が見えつつある。

量的緩和の金融戦略、政府支出の財政戦略は動き出したが、第3の矢である成長戦略は「特区構想」やTPPなどまだ動いていない。既得権益の強い、農業や医療・介護、労働などの規制改革は進まず、法人税減税も進んでいない。TPPはオバマ大統領の政治力低下から先行きに不安を感じる事態が垣間見られ、成長戦略全体が不透明のままだ。

今年は消費税率増税もあって、消費の行方が気になる。

 

消費税は5%から8%になるが、税込価格は105円が108円となり実質は2.85%の上昇になる。しかし、3%上がるとか8%になるとか心理的な勘違いをおこして駈込み消費が増加すると見られて、1~3月は経済成長も大きく増加すると予測されている。

駈込みで何を購入するのだろうか。今買っても先で値崩れしないもの(地デジ対応にエコポイントが効果を上げ多くの人が薄型TVを購入したが、エコポイント終了後の方がはるかに安く売られていた)、バーゲンの無いもの(衣料品や日常的な商品は増税後にバーゲン合戦だろう)、高額なもの等に絞られてくる。

最近のアンケート調査(日経新聞)では、消費者の6割強が「買いだめをしない」と答え、「増税を見越した買い物の予定」はないとの回答が多い。車や住宅などの大型商品は既に必要な人の多くは手に入れているようだし、駆け込み派も「食料品・日用品」の16%が最多で、「冷蔵庫などの耐久消費財」は9%、「車」は8%にとどまるという。

資産効果から百貨店の高額時計やラグジュアリーブランドは好調な売れ行きを見せているが、一般的には節約志向が強く、無駄に余分なものを購入することはなさそうだ。

1997年の3%から5%になった時のような駆け込み需要は無いのではないかとの観測も出始めた。

それでも先週の3連休に近隣の大型家具店を見たが、駐車場は満杯で賑わっている。組立家具など低価格のものを別にすると、大半の家具はカスタマイズする受注生産で納品まで1か月近くかかる。3月末までに発注し支払いを済ませば6か月間預かるというサービスも打ち出し駆け込み需要を取り込もうとしている。また、近くの大型家電店の駐車場も満杯だ。家具や家電などの大型商品はそれなりの需要があるのだろう。

増税後の価格表示対応は個々の小売業によって違う。税込総額表示(内税方式)と税抜本体価格+消費税(外税方式)と別れ、消費者は戸惑うことになる。ショッピングセンター内の店舗もそれぞれ違うので、内税か外税かの違いを見てからの購入になるだろう。

セブン&アイやイオンなどは税抜表示の外税方式、百貨店は従来の税込内税方式となるようだが、専門店は対応がバラバラでユニクロは税抜価格(外税)であるが、無印良品やしまむらは従来からの税込総額(内税)となる。どちらが消費者に分かりやすいか、これから判断が下されるだろう。

増税後の消費離れ対策には多くの小売業がバーゲンの多発となるだろう。大手小売業はオムニチャネル化の推進、売場改装などを打ち出している。

競合差別化や利益確保のために商品のPB化は強化され、PBをベースにした合従連衡も進みそうだ。

小売業にとって消費増税が大きな転換点となるだろう。

 

2014年が明るく良い年であることを祈っているが、世界情勢は問題が多すぎる。

日本も安倍総理の靖国参拝、積極的平和主義、特定秘密保護法、国家安全保障局、道徳教育復活、さらには憲法改正や教育勅語復活などなにやらきな臭い動きばかりが目につく。

覇権を膨張させる中国、隣で騒ぎ立てる韓国、恫喝を繰り返す北朝鮮、それに対して内を向くアメリカなど日本を取り巻く環境も厳しさが増す。

 

イアン・ブレマーが世界の10大政治リスクを「ロイター」のコラムに発表する。氏は国際政治学者で2012年に「Gゼロ後の世界・・・主導国なき時代の勝者はだれか」を発表し話題となった。

2008年の金融危機以降、世界最大のリスクは経済だったが、それは終わった。2014年、大局的な観点から見た経済は比較的安定している。一方、地政学的問題が非常に大きな変動を見せている。中心的な役割を果たす国が不在の「Gゼロ」世界の姿が、ますます浮彫となっていると語る。

 

イアン・ブレマーの10大リスク

10位・トルコ

新興国の中でトルコが特に不安定な存在だ。シリア内線から波及する問題、クルド系反政府組織の勢力拡大、エルドアン首相に対する国民の反発など。

9位・ロシア政府

政府の国民からの支持の著しい低下、原油に過度に依存する経済の停滞等。2014年は不測の事態を見込んでおくべきだ。

8位・中東の混乱拡大

一段と混迷の度合いを深めそうだ。イラクの治安が急激に悪化、米国の中東政策の混乱、イランの核開発問題、アルカイダの脅威、エジプトとチュニジアの政情不安など。

7位・アルカイダ

スンニ派過激組織とアルカイダグループの台頭、現地政府や西側機関はいまや彼らの格好のターゲットとなり、危機が高まっている。

6位・戦略的データ

インターネットとその管理は、国家の果たす役割が増し、戦略的分野に変容している。サイバー攻撃も受けやすくなり、企業のインターネット管理コストは増加する。

5位・石油大国

シェール革命が産油国に影響を及ぼす。生産量の拡大、原油価格の下落圧力、産油国間の競争激化により、ロシア、ナイジェリア、ベネズエラ、サウシアラビアなど石油大国が打撃を受けるだろう。

4位・イラン

イランと西側の核協議での包括的合意に向けた道は開いたが、交渉が不調に終われば、軍事行動のリスクが高まる。今年が正念場の年となる。

3位・新しい中国

習近平国家主席を中心とする中国の指導部は、過去20年では見たことのないほど広範囲な改革を掲げた。しかし、実行には大変な政治的試練が待ち構えており、失敗すれば改革のみならず指導部そのものが弱体化する可能性がある。あまりに多くの改革を性急にやり過ぎれば、既得権益を手放したくない共産党内部からも反発が出てくるかもしれない。一方、改革の成果が少なすぎれば、国民の不満が噴出することになりかねない。

2位・新興国デモ

新興国を代表する6か国、ブラジル、コロンビア、インド、インドネシア、南アフリカ、そしてトルコでは、選挙が問題になる(中国には選挙がなく、ロシアの選挙もあてにならない)。こうした国々では、経済成長の鈍化と新たに生まれた中間層からの要求が、不確実性の高まりを生み出す。ブラジルやトルコ、コロンビア、ロシア、ウクライナで最近行われた反政府デモは、市民の不満が抗議行動に直結する可能性を浮き彫りにした。

1位・米国の同盟危機

中東政策のつまずき、スノーデン容疑者問題、議会の機能不全などにより、米国の外交政策は国際社会にますます理解されにくくなっている。安全保障面では、米国の最友好国であるイスラエル、英国、日本にとって選択肢はほとんどないが、ドイツやフランス、トルコ、サウジアラビア、ブラジルにはそれは当てはまらない。こうした国々は米国との緊密すぎる関係を避け、米国発の問題が自分たちに波及するのを防ぐために、世界での立ち位置を変え始めるだろう。

(1・2・3位は全文、他は抜粋した)

 

 

良い年であって欲しいと願うばかりだ。

今年もよろしくお願い致します。

以上