レポートNo119 2014.7.16  <倉林 勝>

上場アパレル卸業・小売業決算

ワールド(非上場)、オンワード、ワコール、TSI、山陽商会の5社の売上合計はファーストリテイリングに近いが、当期純利益は大きな差がある。各卸業は売上こそ、小売業を超えるが、利益では小売業の後塵を拝している。アパレル市場の主導権は完全に小売業に移行した。


ワールドは非上場であるが情報を開示する。一方、イトキンは1000億円以上の売上はあるが非開示である。

ワールドは当期純利益が赤字、TSIは営業利益が赤字である。

アパレル卸業最大手のワールドはH25年3月期に続いてH26年3月期も最終損益は赤字となった。

H17年11月にMBOにより上場を廃止したが、それ以降、のれん代を減価償却費として年間40億円強を計上している。26年3月期も減価償却費とのれん償却額の合計は117億円となり、赤字となった。

のれん償却前の当期純利益は25年3月期は35億73百万円の黒字、26年3月期は27億25百万円の黒字となっている。

買収総額2300億円のMBOが重くのしかかっている。

自己資本比率は25年3月期14.0%、26年3月期12.7%である。

婦人服が約61%を占めるが、それに次ぐ雑貨(服飾雑貨・生活雑貨)が24%を占める。婦人服の約40%である。

26年2月期は増収増益であるが、営業利益・経常利益は減益となった。

売上高は207億円増加したが、売上総利益率が1.5pts低下し、販管費も72億円増加した。これにより営業利益・経常利益共に前期から減少したが、前期の減損損失69億円が今期はなくなり、当期純利益は若干の増加となった。

自己資本比率は25年2月期57.1%、26年2月期55.2%である。

アパレル関連事業として欧州で461億円、アジア・北米で89億円、合計550億円(アパレル関連の20%)の売上があるが、営業利益は赤字である。海外で利益を生む企業は少ない。

 

(株)オンワード樫山(単体)

オンワード樫山の売上高は1597億円(前期比102.2%)、営業利益115億円(前期比104.5%)、経常利益133億円(前期比102.5%)である。オンワード樫山が上げる利益を他が減少させる。

婦人服が69%、紳士服が23%で雑貨の扱いは少ない。

チャネル別は百貨店が75%、新流通が20%であるが、成長率は新流通が非常に高い。新流通は百貨店以外の駅ビルやファッションビルなどの自社店舗やEコマースなどのようだ。Eコマースの売上は54億円となった。

ワコールはインナーウェアが中心の企業であるが、他のアパレル系企業に比べて営業利益率も当期純利益率も高く、業績も良い。

米国基準の損益計算書のため、経常利益は科目を配分して記入した。

自己資本比率は25年3月期73.3%、26年3月期75.4%である。

営業利益は、海外ワコール事業は前期から20億円増、ピーチ・ジョン事業は前期27億円の赤字から8千万円の黒字に転換、この結果が純利益増となった。

その他事業は、ルシアンやマネキンのリース、商業施設の設計施工などである。ルシアンは増収となったが、営業利益は赤字であった。

TSIホールディングスは東京スタイル、サンエー・インターナショナルの合併会社である。

減収、営業赤字であるが、受取利息、受取配当金、デリバティブ評価益、不動産収入等の営業外収益で経常黒字となっている。

今期は有価証券売却益を特別利益に62億円計上し、当期純利益を黒字とした。

自己資本比率は25年2月期、26年2月期共に64.3%である。

東京スタイルは黒字化するが営業利益は微々たるものだ。営業外収益と有価証券売却益で当期純利益を確保する。一方、サンエー・インターナショナルは減収の上に売上総利益率も1.7pts低下し、営業・経常・当期純利益全てが赤字に転落した。

販売先を見ると百貨店が東京スタイル30.4%、サンエーが28.8%、合計で29.5%となり、前期比88.0%である。非百貨店(ファッションビル、駅ビル、路面店、アウトレット等)は東京スタイル37.1%、サンエー52.9%、合計で45.6%となり、前期比は97.4%である。

ECは合わせて8.9%、前期比121.0%、海外は合わせて6.5%、前期比127.6%である。

百貨店の落ち込みが大きく業績に影響する。

25年12月期は構造改革の施策として、潮見ビルの譲渡により固定資産売却益を26億7千万円計上し、希望退職者の費用として31億7千万円を特別利益・損失に計上した。

自己資本比率は24年12月期49.7%、25年12月期56.1%である。

売上の80%を百貨店で行い、男子・婦人衣料の扱いが87%である。

ブランド別の業績が非開示のため、バーバリーブランドの売上は不明だ。バーバリーとの製造ライセンス契約は2015年春物で終了するが、その影響は分からない。

 

ワコールを除く4社の売上合計は約8800億円、純利益は約77億円である。

どのアパレル卸業も苦戦の跡がうかがえる。この分野は完全に商社に移ってしまったが、商社も消耗戦の中で疲弊しつつある。

SPやファストファッションが主流となった今日、百貨店を中心とするアパレル卸も他のチャネルの開発を急いでいるが、規模はまだ小さい。

純利益は、アダストリアホールディングスが赤字、西松屋、パルが2%台である。

しまむら、ファーストリテイリング(2013年8月期)は参考に記した。

アパレル業績は卸業から完全に小売業に変わった。

前期のデリバティブ評価益37億円が今期は8億円に減少したが、為替差損の減少、減損損失の減少等により増収増益となった。

自己資本比率は25年3月期69.0%、26年3月期68.6%である。

紳士服販売事業は青山商事のスーツ事業、ブルーリバース等の事業で、近時は女性用の就活時スーツ、キャリア向けスーツなども扱い、売上は全体の83%である。

カード事業は(株)青山キャピタルがクレジットカードを扱う。商業印刷事業は(株)アスコンがチラシ・ダイレクトメールの印刷、発送を行う。雑貨販売事業は(株)青五がダイソー&アオヤマ100円ショップを展開する。

その他はカジュアル事業、リユース事業、飲食事業を行うが、営業赤字である。カジュアル事業はキャラジャ(26店舗)、リーバイスストア(6店舗)、アメリカンイーグル・アウト・フィッターズ(8店舗)などがある。

前期より減損損失が13億円増加し24億円となるが、増収増益である。売上総利益率は青山商事より8.6pts少ないが、経費率も9.8pts少ない。営業・経常・当期純利益率は青山商事より若干上回る。

自己資本比率は25年3月期57.5%、26年3月期61.7%である。

ファッション事業は「AOKI」とメンズ・レディースのビジネス&カジュアルを展開する「ORIHICA」からなる。売上は全体の65%、営業利益は69%である。

アニヴェルセル・ブライダル事業はアニヴェルセル(株)が邸宅式結婚式場を展開する。

カラオケルーム運営事業は(株)ヴァリックが南仏をテーマにカラオケルーム「コート・ダジュール」を運営する。

複合カフェ運営事業は(株)ヴァリックがバリ島をイメージした複合カフェ(快活CLUB等)を運営する。

H25年9月に(株)トリニティアーツを連結子会社とし、(株)ポイントから(株)アダストリアホールディングスに商号を変更した。また、H26年2月に物流機能を担う(株)ポジックと商品企画・生産管理機能を担う(株)NATURAL NINEが合併し商号を(株)N9&PGとした。

(株)アダストリアホールディングスにはナチュラルテーストのファッションブランド(グローバルワークス、ローリーズファーム等)を展開する(株)ポイント、衣料品・服飾雑貨・生活雑貨等を扱うライフスタイル提案型(ニコアンド、スタディオクリップ等)を展開する(株)トリニティアーツ、企画・生産・物流の(株)N9&PG等が連結子会社としてある。

 

26年2月期はトリニティアーツなどの連結子会社化に伴うのれん償却や人件費増などで販管費が175億円増加し、営業利益は大幅に減少した。また、N9&PGの減損処理等62億円を一括処理したことなどで当期純利益は赤字となった。

自己資本比率は25年2月期60.9%、26年2月期56.8%である。

トリニティアーツは連結対象となった下期業績を記した。

店舗数はポイント807店舗(グローバルワークス173店舗、ローリーズファーム159店舗等)、トリニティアーツ283店舗(ニコアンド100店舗、スタディオクリップ129店舗等)、海外81店舗(香港30店舗、中国21店舗、台湾21店舗等)を含んで総計1213店舗となる。

ユナイテッドアローズ(UA)は連結子会社に(株)フィーゴ(イタリア製バック等の輸入販売・年商33億円)、(株)コーエン(衣料品・身の回り品の販売・年商72億円)を持ち、25年10月に海外初の直営店を台北に出店した。

営業・経常・当期純利益は3期連続の最高益となった。

自己資本比率は25年3月期46.7%、26年3月期53.2%である。

ビジネスユニットの内訳は

UA事業(ユナイテッドアローズ)525億円(前期比109.9%)、GRL事業(グリーンレーベル・リラクシング)267億円(前期比113.7%)、CH事業(クロムハーツ)93億円(126.7%)、SBU事業(スモールビジネスユニット)150億円(前期比105.7%)である。

増収であるが、営業総利益率が37.1%から36.3%に低下し、販管費が32.0%から32.2%に上昇した。この結果、営業利益・経常利益が減少し、減損損失や店舗閉鎖損失などの特損が前期から23億円増加したことなどで当期純利益も減少した。

自己資本比率は25年2月期71.4%、26年2月期73.7%である。

(株)パルを中心に、英・インターナショナル(株)、(株)ブランミューデイズ、ジェネラル(株)、(株)バレリー、(株)マグスタイル、(株)ナイスクラップ等の連結子会社から構成される。

26月2月期は増収であるが、売上総利益率が56.5%から54.7%に低下し、販管費率が若干増加したことで利益は減少した。

自己資本比率は25年2月期46.3%、26年2月期47.2%である。

パル単体も増収減益である。売上総利益率が2.0pts減少し、販管費率も上昇したことで利益は低下した。

また、連結純利益よりパル単体純利益が約4億6千万多いので、連結子会社合計は赤字ということになる。

7月9日付け日経MJによる資料である。(単独決算が中心となっている)

アパレル市場の主導権は卸型企業から小売企業に移行した。卸型企業はファーストリテイリングやしまむらの売上に遠く及ばず、利益面では多くのアパレル市場の主導権は卸型企業から小売企業に移行した。卸型企業はファーストリテイリングやしまむらの売上に遠く及ばず、利益面では多くの小売業の後塵を拝している。

小売業の調達は卸から、商社、そして自社直接調達に力点は変化した。

流通の変化は衣料品と食品で激しさを増す。

 

以上