レポートNo112 2014.5.16  <倉林 勝>

消費増税直前2014年3月の動き

3月の家計調査では消費支出が7.2%増加し、1979年3月の5.8%を大きく上回り、39年ぶりの高水準となった。1997年3月と2014年3月の消費の違い、今年1~3月の家計消費状況、3月の家計消費状況(いずれも総務省統計局資料)で、駈込み需要の概略を見る。


3月末、2013年度の経常黒字は1985年以降で過去最少の7899億円に留まり1兆円の大台を初めて割り込んだ。貿易収支は10兆8600億円の赤字となり、比較できる1996年度以降で最大となった。輸入は前年度の平均為替相場から約17円の円安が進み、エネルギー関連の輸入が急増し前年度から約2割増の80兆6600億円となった。輸出は前年度から約12%増え6年ぶりの高水準となり69兆8000億円となったが、企業が生産拠点を海外に移しており、大幅な円安にもかかわらず緩やかな回復に留まった。第一次所得収支(海外からの配当金等)は前年度から14%増え16兆6500億円の黒字となり、5年連続で黒字幅は増加し85年以降で最大となった。

貿易収支の赤字を金融収支の黒字で稼ぐ姿が鮮明になった1年であった。

 

安倍内閣成立後500日を経るが、ここにきてアベノミクスの輝きも失いつつあるように感じる。第一の矢である異次元の金融緩和、第二の公共事業等の政府支出などによる円安・株高局面は足踏みをしている。昨年末に1ドル105円台を付けた円は101円前後で推移し、日経平均株価は年末の16441円から5月9日には14199円まで約14%下落した。特に、5月7日には前年同日から147円安い14033円を付けるなど低迷状況だ。反してアメリカNYダウは4月30日に16580ドルの市場最高値を更新し、5月9日には16583ドルとさらに市場最高値を更新した。

東証1部の時価総額は年末から4月末までに45兆円減額となった。

 

日本株は海外からの投資が6割ほどといわれ、株価は海外投資家に左右されるが、海外投資家からは第三の矢が不透明に思われ、足踏みの状況だ。安倍首相は「対話のドアは常にオープンだ」と言いながら、中国に向けて刺激的な言葉を発する。中国が反論し、プレゼンスを高めるのを理由に集団的自衛権等に力を入れ、積極的平和主義を掲げる。

安倍首相が第三の矢にもたつく間に消費増税を行い、経済から外交・軍事問題に軸足を移したと海外からは見られることが多くなった。

イアン・ブレマー氏はロイターのコラムで、日本が優先すべき外交課題の1番は「アベノミクスの推進」と語る。日本の最優先事項は安倍首相が掲げる経済政策を徹底的に進めて行くことだ。最近、安全保障問題への取り組みを強めているが、経済政策は今後も継続する必要がある。経済の軌道を長期的に上向かせることは、日本にとって最も重要な課題だ。そうすることで日本はより魅力的なパートナーとなるほか、経済力によって域内問題への影響力を高めることもできる。アベノミクスを推し進めることは、安倍首相が得た政治的資本の最も有益な使い方だ。(イアン・ブレマー)

 

ここにきて、人手不足感が出始めた。3月の完全失業率は3.6%(前年同月4.1%)、有効求人倍率は1.07倍(前年同月0.83倍)となり、特に建設関係の有効求人倍率は6倍を超え、運輸物流関係は2倍を超える人出不足となっている。また、外食を含め、流通関係の人手不足は出店の抑制や、店舗閉鎖、アルバイトの等の社員登用などが話題となっている。

政府支出の公共事業も人手不足から予算執行が危ぶまれ、復興需要とオリンピックが不安視され、外国人労働者の受け入拡大や移民等が語られるようになった。

人手不足感が出始めたが、3月の勤労者世帯実収入は名目で1.4%減少、実質は3.3%減少し、6ヶ月連続の減少となった。所得が上昇するのは、消費増税後しばらく経ってからだろう。

また、3月の全国消費者物価は総合で前年同月比1.6%の上昇なり、生鮮食品を除く総合で1.3%の上昇、食料とエネルギーを除く総合で0.7%の上昇となった。しかし、都市部での上昇は全国を上回り、4月の東京都区部速報値では、総合で前年同月比2.9%の上昇、生鮮食品を除く総合指数は2.7%の上昇、食料とエネルギーを除く総合指数は2.0%の上昇となり、消費増税が物価に反映された様子がうかがえる。

実収入が未だ減少する中での物価上昇が今後の消費にどのように影響を及ばすか、不透明感が漂う。

 

3月の家計調査を見ると、物価変動の影響を除いた実質で7.2%増加し、1979年3月の消費増税前の5.8%より大きく、39年ぶりの高水準となった。

可処分所得に対する消費支出、平均消費性向は107.2%となり、駆け込み需要等で所得を上回る消費となった。

消費増税の影響は「限定的」と報道されるが、駈込み需要の大きかった業種、変化が少なかった業種で差が出るだろう。3・4・5月の3か月間累計で、前年からどのように変化したかを見る必要がある。

 

(A)前回消費税率引上げ前(1997年3月)との比較(総務省統計局)

今年3月の消費支出対前年比は97年3月の5.8%に対し7.2%の増となった。

 

今年3月前年同月比が特に増加した科目は家具・家事用品で82.5%の増となったが、食料やその他の消費支出は微増であった。

項目別に見ると家庭用耐久財が約2.6倍、寝具類が約2.3倍、教養娯楽用耐久財が2倍となった。

また、室内装備・装飾品、家事用消耗品、下着類、保険医療用品・器具、理美容用品なども大幅増となった。

 

前回(1997年3月)の増加率と比べて、今回の増加率が多い科目は家具・家事用品で44.2pts増加した。被服・履物、その他消費支出は微増したが、住居、交通・通信、教養娯楽、保険医療、食料は数ポイント減少した。

項目別に見ると、寝具類、家庭用耐久財、室内装備・装飾品、保険医療用具・器具、理美容用品が大きく増加し、履物類、教養娯楽用品、自動車等関係費など低下した項目もある。

 

今回の消費増税前の駆け込み需要は、特に家具・家事用品に集中している。家電・家具・ホームセンター・ドラックストアなどに特需が集中しことがうかがえる。

No111の専門量販店販売統計を見ると、資料が今年からのために前年比はないが、前月比で見ると

家電大型専門店は84.2%増、ドラックストアは33.9%増、ホームセンターは50.2%増となっている。

 

(分類明細)

家庭用耐久財・・・家事用耐久財(冷蔵庫、掃除機、洗濯機、炊事用器具、ミシン等)、冷暖房用器具、一般家具

寝具類・・・(ベッド、布団、毛布等)

室内装備・装飾品・・・照明、室内装飾品(書画・骨董等)、敷物、カーテン等

家事用消耗品・・・ラップ、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、台所・洗濯洗剤、家事用消耗品等

家事雑事・・・茶碗・皿、食卓用品、台所用品、電球、タオル、掃除・洗濯・工具・裁縫用具等

設備修繕・維持・・・設備器具(システムキッチン、物置、障子、洗面化粧台、温水便器、浴槽等)

            修繕材料(レンガ、ブロック、ペンキ、セメント、人工芝、芝等)

            工事その他サービス(畳替え、給排水工事、外壁工事、植木・庭手入れ等)

交通・・・鉄道・バス運賃、通学・通勤定期代、タクシー代、航空運賃、有料道路料等

自動車等関係費・・・自動車購入、自転車購入、自動車等維持(ガソリン、自動車部品等)、自動車整備   

             費、駐車場賃料、自動車保険等

下着類・・・男子・婦人・子供下着、ファンデーション、寝間着

履物類・・・運動靴、サンダル、男子靴、婦人靴、子供靴、雨靴、草履、下駄、スリッパ等

洋服・・・男子・婦人・子供・乳児服等、シャツ・セーターは除く

教養娯楽用耐久財・・・テレビ、ステレオ、ビデオ、パソコン、カメラ、楽器、書斎・学習用机・いす等

教養娯楽用品・・・文房具、運動用具、玩具、園芸・切り花、ペットフード・愛玩動物・用品等

保険医療用品・器具・・・紙おむつ、保健用消耗品、眼鏡、コンタクト、他の保険医療用品・器具

               (体温計、血圧計、ヘルスメーター、健康布団、磁気治療器等)

酒類・・・清酒、焼酎、ワイン、ビール、ウイスキー、発泡酒等

油脂・調味料・・・油脂(食用油。マーガリン等、バターは除く)、調味料(塩、しょう油、みそ、砂糖、ソー    

           ス、ケチャップ、マヨネーズ、ジャム、ふりかけ、つゆ・たれ、風味調味料等)

飲料・・・茶類、コーヒー・ココア、他の飲料(ジュース、炭酸飲料、乳酸菌飲料、ミネラルウォーター等)

穀類・・・米、パン、麺類、他の穀類(小麦粉、もち等)

理美容用品・・・理美容用電気器具(ドライヤー、電気カミソリ等)、歯磨き・歯ブラシ、理美容用品(くし、

          ブラシ、かつら等)、浴用・洗顔石鹸、シャンプー・リンス、化粧品等

たばこ・・・国産品、外国産

身の回り品・・・傘、カバン、バック、装身具、腕時計、身の回り用品(服飾品、喫煙具、ハンカチ、扇子

         定期入れ、名刺入れ、財布、サングラス等)

 

(B)家計消費状況調査・平成26年3月速報(総務省統計局)

3月 対前年同月・名目増減率が5%以上の品目

増加項目

(通信・放送)・・・移動電話(携帯電話・PHS)使用料+7.5%、ケーブルテレビ受信料(インターネット接続サービスとセット契約の場合)+11.8

(家具等)・・・たんす+28.2%、ベッド+51.7%、布団+59.7%、机・いす(事務・学習用)+21.5%、食器戸棚+120.0%、応接セット+130.3%、楽器(部品を含む)+13.2

(衣類)・・・背広服+13.5%、婦人服スーツ・ワンピース+8.0%、和服(男子・婦人用)+8.1%、腕時計+106.9%、装身具(アクセサリー類)+53.4

(自動車等関係)・・・自動車(新車)42.7

(住宅関係)・・・家屋に関する設備費・工事費・修理費(内装)+73.7%、家屋に関する設備費・工事費・修理費(外装)+30.7%、宅地の地代+9.1

(家電等)・・・冷蔵庫+198.0%、洗濯機+112.5%、エアコンディショナー+190.3%、ミシン77.3%、ステレオセット+40.3%、パソコン+153.1%、パソコン用周辺機器・ソフト+43.1%、ファクシミリ付固定電話機+58.2%、テレビ80.2%、デジタル放送チューナー・アンテナ+154.5%、カメラ(使い捨てカメラは除く)+9.4

(医療)・・・歯科診療代+25.3%、歯科以外の診療代+5.2

(その他)・・・私立授業料等(幼稚園~大学、専修学校)+9.2%、補習教育費+16.0%、宿泊料+8.7%、パック旅行費(国内)+17.2%、パック旅行費(外国)+14.7%、スポーツ施設使用料+11.8%、信仰関係費+55.6

 

減少項目

(通信・放送)・・・ケーブルテレビ受信料(テレビ放送受信のみの場合)△5.6

(家具等)・・・ナシ

(衣類)・・・ナシ

(自動車等関係)・・・自動車保険料(自賠責)△7.7%、自動車以外の原動機付湯用機器△41.6

(住宅関係)・・・給排水関係工事費△13.7%、庭・植木の手入れ代△15.3

(家電等)・・・移動電話機(携帯・PHSの本体と加入料)△11.9%、テレビゲーム(ソフトを含む)△17.2%、カー・ナビゲーション△16.8

(医療)・・・出産入院料△47.3

(その他)・・・有料道路料(ETC以外の利用)△13.3%、自動車教習料△13.8%、挙式・披露宴費用△10.1%、葬儀・法事費用△19.1

 

1~3月平均 対前年同月・名目増減率が5%以上の品目

増加項目

(通信・放送)・・・移動電話(携帯電話・PHS)使用料+5.7%、インターネット接続料(プロバイダ料金など)+5.4%、ケーブルテレビ受信料(インターネット接続サービスとセット契約の場合)+13.2

(家具等)・・・たんす+7.7%、ベッド+42.8%、布団+17.3%、食器戸棚+20.8%、応接セット+98.1

(衣類)・・・背広服+11.4%、腕時計+68.2%、装身具(アクセサリー類)+27.0

(自動車等関係)・・・自動車(新車)31.3

(住宅関係)・・・家屋に関する設備費・工事費・修理費(内装)+56.5%、家屋に関する設備費・工事費・修理費(外装)+17.5%、宅地の地代+18.1

(家電等)・・・冷蔵庫+144.8%、洗濯機+68.8%、エアコンディショナー+91.1%、ミシン15.2%、ステレオセット+17.4%、パソコン+88.1%、パソコン用周辺機器・ソフト+19.0%、ファクシミリ付固定電話機+21.5%、テレビ42.2%、デジタル放送チューナー・アンテナ+8.6

(医療)・・・歯科診療代+11.3

(その他)・・・私立授業料等(幼稚園~大学、専修学校)+5.7%、補習教育費+9.5%、宿泊料+6.1%、パック旅行費(国内)+12.5%、スポーツ施設使用料+9.5%、信仰関係費+17.0

 

減少項目

(通信・放送)・・・ケーブルテレビ受信料(テレビ放送受信のみの場合)△7.2

(家具等)・・・机・いす(事務・学習用)△8.9%、楽器(部品を含む)△21.0

(衣類)・・・ナシ

(自動車等関係)・・・自動車保険料(自賠責)△16.3%、自動車以外の原動機付湯用機器△45.4

(住宅関係)・・・庭・植木の手入れ代△7.3

(家電等)・・・移動電話機(携帯・PHSの本体と加入料)△18.1%、テレビゲーム(ソフトを含む)△20.6%、ビデオカメラ△24.8%、カー・ナビゲーション△25.5

(医療)・・・出産入院料△22.4

(その他)・・・有料道路料(ETC以外の利用)△17.8%、自動車教習料△10.1%、挙式・披露宴費用△18.6%、葬儀・法事費用△14.6

 

3月に机・いす、楽器など増加するが、1~3月計では減少である。一方、給排水工事費は3月に減少するが1~3月計では増加している。

移動電話機は3月も、1~3月計も減少している。使用料は増加するがハードは売れていないようだ。

ミシンは3月に72.3%増、1~3月計は15.2%増で、この分手づくり業界は潤ったのだろう。

 

4月速報を見ると百貨店は大きく減少した。伊勢丹△7.9%、高島屋△13.2%、Jフロント△15.3%、H2O△7.9%となったが想定の範囲で、3~4月累計では、高島屋+10.3%、Jフロント+11.7%である。

専門店も良品計画のように3月に+28%増加しながら4月も+2%の増加と健闘し、ユニクロ、ABCマート、ユナイデットアローズなどもプラスとなった。

消費増税の影響は限定的かも知れない。

以上