レポートNo109 2014.4.17  <倉林 勝>

マーケットプレイス(楽天・ヤフー・アマゾン)

楽天の独断場であったマーケットプレイスにアマゾン、ヤフーが参入し競争が厳しさを増してきた。3社の連結業績は売上ではアマゾン、楽天、ヤフーの順であるが、純利益ではヤフー、楽天、アマゾンの順だ。ビジネスモデルの違いや市場攻略の方法などが理由であろう。3社の決算を比べる。


Eコマースの急速な発展はリアルの小売業に脅威をもたらす。

アマゾンの売上は7兆4000億円を超え、日本国内においても流通総額は1兆円超えたと見られる。

楽天市場の流通総額は1兆7000億円を超え、CtoC(オークション)の最大手であるヤフーもショッピング事業の取り組みを強化し、新たにリクルートも参入する。

 

急拡大するアマゾンの脅威に対して、14年の全米小売業協会は二つの方向を示した。

第1は「リアル」(実店舗・体験・モノ)の価値観の再認識・・・人間的触れ合いを求め始めた生活者に、実店舗はその強みをどう生かすか。

第2はテクノロジーの進化が全く新しい可能性を開いている。チャンスを見逃すなである。

モバイル、ソーシャル、オムニチャネルなど台頭する潮流に乗るのは必要条件で、それらを「リアル+››デジタル」でどのように実現するかの段階に入ったと語られた。(繊研新聞レポートから)

 

アマゾンジャパンは従来の仕入れて販売するモデルだけでなく、マーケットプレイスにも力を注ぎ既に16万を超える出店者を集めたという。

ヤフーはオークションが中心であったが、出店料無料を打ち出し既に6万を超える申し込みがあったという。

楽天市場は順調に拡大しているが、強力なコンペチターが出現し、物流を始めとしたサービス競争は熾烈となってきた。

アマゾンは1ドル=100円で計算、前期純利益は39億円の赤字である。ヤフーは前期の実績である。

売上順位はアマゾン、楽天、ヤフーであるが、純利益はヤフー、楽天、アマゾンの順である。

ビジネスモデルの違いや拡大方針の違い等によるものであろう。経常利益はアマゾンと楽天が税引前利益を記載しているために記さなかった。

 

(B)楽天株式会社

楽天は「インターネットサービス」、「インターネット金融」、「その他」からなる事業形態である。

「インターネットサービス」は、楽天(株)、楽天トラベル(株)、楽天物流(株)、ケンコーコム(株)、Kobo

Inc等からなる。

「インターネット金融」は、楽天カード(株)、楽天銀行(株)、楽天証券(株)、楽天生命保険(株)、楽天Edy(株)等からなる。

その他は(株)楽天球団、(株)オーネット等からなっている。

インターネットサービス・・・

主力サービスの「楽天市場」において、スマートデバイス向けサービスの強化、ビックデータを活用したパーソナライズマーケティング、大型セールイベント「楽天スーパーセール」、東北楽天ゴールデンイーグルス優勝記念セール等の各種施策を積極的に展開した。なお、「楽天スーパーロジスティクス」等を通じた、BtoBtoCマーケットプレイス型ビジネスモデルに適合した物流サービスの拡充にも注力した。これらの結果、ユニーク購入者(四半期に1回以上購入した人)や注文件数は堅調に推移し、流通総額は19.8%増となった。

トラベルサービスは、レジャー向け販売、レンタカー、インバウンドサービス(外国語サイトからの予約)等の需要が好調の結果15.2%増となった。

また、デジタルコンテンツサービスの強化に向けて、電子書籍サービス「kobo」などの新サービスの提供を始めた。

将来成長分野への先行投資を継続しているが、既存事業の利益は順調に増加し、前年度計上の減損の反動もあって87.5%増となった。

 

インターネット金融・・・

クレジットカード関連の「楽天カード」会員の増加に伴いショッピング取扱高が42.0%増となり、リボ残高も順調に積み上がったことで手数料収入が増加した。証券サービスにおいては、国内株式売買代金が236.9%増加する等、売上収益・利益が大幅に増加した。

国内EC流通総額は楽天市場以外に、パッケージメディア、オークション、ダウンロード、チケット、ネットスーパー、楽天競馬などを含んでいる。また、第2四半期から連結したスタイライフを、第3四半期から楽天マート・ケンコーコムなどが加わっている。

1店舗当たり年間売上は単純に流通総額を期末出店店舗数で除したものである。

店舗数の伸びに比べ流通総額が大きく増加し、1店舗売上も大きく伸びる。楽天イーグルスの優勝セールやスーパーセールなどの施策の効果が大きかったのだろう。

国内EC流通総額は第4四半期(10~12月)が最も大きく、H25年度は5146億円(前期比123.0%)で年間の30%を占める。この時期のユニーク購入者数は1552万人(前期比118.6%)、注文件数6918万件(前期比114.8%)となった。

楽天市場他を含めた流通総額を単純に計算すると、一人当り7434円の商品を4.46個購入し、総額3万3157円を使っていることになる。

 

「楽天市場」単独の詳細はないが、第4四半期の1店舗流通総額は1千万円を超えて(前年比118.3%)年間では3500万円レベルと推測する。これを基準に店舗数を乗じると約1兆4700万円となる。楽天市場単独では1兆5000億円前後と推定される。

 

⑤楽天経済圏

楽天の基本的経営戦略は、楽天グループ会員を中心としたユーザーに対し様々なインターネットサービスを提供するビジネスモデル「楽天経済圏」を中核としている。この「楽天経済圏」において、国内外の会員がEC、デジタルコンテンツ、金融等の複数のサービスを回遊的・継続的に利用できる環境を整備することで、会員一人当たりの生涯価値(ライフタイムバリュー)の最大化等の相乗効果を目指している。

H25年12月期の売上収益5186億円のうち日本は4590億円で残る596億円が海外である。

アメリカ394億円、ヨーロッパ184億円、アジア他が18億円となっている。

 

(C)ヤフー株式会社

ヤフーは1996年米国ヤフーインクとソフトバンクの合弁で設立した。

現在、ソフトバンクを親会社として、米国ヤフーインクの提供する「Yahoo」ブランドでのインターネットポータルサービスの日本最大手として事業を行っている。

ポータルサイトを活用した主な事業は、「マーケティングソリューション事業」と「コンシューマ事業」である。

「マーケティングソリューション事業」は、広告商品の企画・販売(プロモーション広告、プレミアム広告等)、情報提供サービス(不動産、求人、自動車、地域情報等)、その他法人向けサービスの提供(データセンター関連等。

「コンシューマ事業」はコマース関連サービスの提供(オークション、ショッピング、有料デジタルコンテンツ等)、会員向けサービスの提供(Yahooプレミアム、Yahoo BB等)。

26年3月期の第3四半期累計(25年4月~25年12月)を参考に記したが、売上高前期比116.3%、営業利益前期比108.6%、経常利益前期比107.9%、四半期純利益前期比112.0%となって、順調な動きである。

その他には決済・金融関連サービス等が含まれている。

売上高はマーケティングソリューション事業が68%、コンシューマ事業が31%であるが、経常利益はマーケティングソリューション事業事業が67%、コンシューマ事業が42%(調整前)になり、コンシューマ事業の経常利益率は76%となっている。

成長率はマーケティングソリューション事業が高い。

 

マーケティングソリューション事業・・・

プロモーション広告においてスマートフォン経由の広告出稿が拡大したことに加え、プレミアム広告において「プライムディスプレイ」の売上増加やスマートフォンにおける「ブランドパネル」の大幅な売り上げの伸びにより、プロモーション広告、プレミアム広告ともに過去最高の売上となった。

また、情報掲載サービスの売上も大きく伸びたほか、データセンター関連の売上も増加した。

 

コンシューマ事業・・・

「Yahooプレミアム」において、料金改定などにより売上が増加した。また、ゲーム関連サービスにおいても、グリー(株)との業務提携の効果や「Yahoo Mobage」の有効会員数が1000万人を突破し利用が拡大したことから大幅に拡大した。

*「ヤオフク」(H25年3月にYahooオークションの名称をヤオフクに変更)の取扱高はわずかに減少したが、スマートフォン経由の取扱高は大きく拡大した。

*「Yahooショッピング」でのスマートフォン経由の取扱高が大きく拡大したことなどにより、ショッピング関連全体の取扱高は増加した。また、利益面を重視し、販売促進費の配分の見直しを実施した。

ショッピングにはトラベルなどが含まれる。その他事業はウォレット(決済サービス)、カード、デジタルコンテンツ等である。

eコマースの取扱高は1兆6000億円で、楽天の流通総額1兆7000億とほぼ同規模である。ショッピングは3000億円、オークションは6800億円、合わせて9800億円となり、楽天市場推定1兆5000億円の65%である。

H25年3月期はオークション事業が微減、他が微増、全体でも微増であったが、H26年3月期は増加しているようだ。

H26年3月期第3四半期(13年10~12月)のeコマース取扱高は107.3%になり、ショッピング事業103.4%、オークション事業109.8%、その他事業106.5%で313億円の増加となった。

 

(D)AMAZON.COM、INC

アマゾンは自社仕入れの商品や自社開発商品などをネットで販売するが、最近はクラウドサービスやマーケットプレイスサービスなどに力を入れる。

売上規模は拡大の一途であるが、投資も多く経費の増加率は売上増加率を大きく超える。

特にフルフィルメントは8585億円(売上比11.5%、前期比133.7%)、技術・コンテンツ開発6565億円(売上比8.8%、前期比143.8%)となっている。キンドルの自社開発に続きスマートフォンも自社開発を行うとの情報もあるので、開発費は増加するのであろう。その分売上総利益率は増加する。

(フルフィルメント・・・商品の受注から発送までの全ての管理業務。受注、ピッキング・梱包・発送、在庫管理、代金請求・入金処理、苦情・問合せ、返品・交換などの全体業務)

セグメント利益は経費の中から一般管理費やその他経費を省いた経費(フルフィルメント、マーケテイング、技術・開発等の経費)を売上総利益から差し引いた利益のようだ。

売上を見ると北米の増加が大きく、セグメント利益に関しては圧倒的に北米となっている。

前年発表した国別売上は発表していないので、日本の正確な売上は不明だが流通総額は1兆円規模と推定されている。海外全体の利益が低調なので、日本においても利益面では苦しいものがあるかも知れない。

サービス売上は音楽、映像、デジタルブックなどのデジタルコンテンツやクラウドサービス、マーケットプレイスサービス手数料などの売上と思われる。

サービス売上の伸びは高く、その比率も年々高まっていく。キンドル(書籍リーダー)やクラウドサービスなどが北米で大きく伸びているのだろう。

メディアは本、音楽、映像、ゲーム、ソフトウェア、デジタルダウンロードなどである。

エレクトロニクス&ジェネラルマーチャンダイズはコンピューター、オフィス用品、エレクトロニクス、ホーム&ガーデン、食品、ヘルス&ビューティ、おもちゃ、キッズ&ベビー、アパレル、シューズ&ジェリー、スポーツ&アウトドアなどである。

その他はウェブサービス(クラウドサービスなど)、広告サービス(マーケテイング&プロモーション等)、クレジットカードなどである。

北米の伸びはエレクトロニクス&ジェネラルマーチャンダイズが規模で大きく、伸び率ではその他が非常に大きい。海外でのメディアの伸びは横ばいに近い。

アマゾンのクラウドサービスの世界シェアは28%で、ライバルIBMの7%を大きく上回る。徹底した価格競争と性能や信頼性で高い評価を受けて米中央情報局(CIA)の入札においてもIBMを退けて受注した。ビックデータ時代を迎える中でクラウドの「アマゾン・ウェブ・サービス」は日本国内でも利用企業が増えていく。

 

(E)マーケットプレイス

日本国内でマーケットプレイス(仮想商店街)のビジネスモデルを確立し圧倒的強さを見せてきた楽天市場に対し、アマゾンやヤフーが激しい戦いを挑む。そして新たにリクルートも参入する。

「楽天市場」単独の流通総額1兆5000億円に対し、アマゾンは自社販売に加えマーケットプレイスにも力を入れ両者を加えた流通総額は1兆円規模と推定され、ヤフーもショッピング事業とオークション事業の総計は9800億円、ほぼ1兆円となった。

 

楽天・・・

*楽天はBtoBtoCの「楽天市場」型のビジネスモデルを世界に向けて推進中であるが、国内においては大型イベント「楽天スーパーセール」などで客を集め出店者を拡大する。

物流サービスを戦略的位置づけとし、市場事業との連携強化を打ち出す。市場事業と物流事業を同一役員の管掌のもとに両事業の連携を更に強化する。また、物流ネットワークの最適化のために、配送会社の配送能力向上に応じたネットワークを再設計し、RFC(リージョナルフルフィルメントセンター)市川と川西の2拠点を拡充する。

*楽天は共通ポイントカード「Rポイントカード」を今秋に発行し、楽天市場などで使える「楽天スーパーポイント」と統合する計画だ。共通カードは楽天グループ会員数9000万人規模の強みを生かし、加盟店を取り込む。Jフロントリテイリング、サークルKサンクス、ミスタードーナツ、コーヒーチェーンのプロント、出光興産などが既に加盟を表明し、楽天市場の出店者にも参加を呼びかける。ポイントカードの強化も楽天市場にとっての魅力の一つになるだろう。

*楽天は従来個人ユーザーが店舗との間でカードや代引き、銀行振込、電子マネー等で決済していたが、新たに楽天が決済のプラットフォームを作り、ユーザーと店舗間での決済のやり取りを楽天のプラットフォームが取りまとめる決済サービスを開始する。これにより、決済の安全・安心、ユーザー保障、詐欺対策の改善を行う。

 

ヤフー・・・

*ヤフーの流通総額は楽天に匹敵する規模であるが、ショッピング事業は3000億円と「楽天市場」の2割である。オークション事業はCtoCのため消費税がかからないとういことで拡大傾向にあり、ショッピング事業は楽天の独走を阻む意欲を持って力を入れる。

「ヤフーショッピング」は昨年秋から出店料を無料として出店者を集め、今年1月末には9万店に達したという。また、今年1月からは出店希望者向けに、審査が通れば最短5分で開店できるシステムの提供を開始し、パソコンを使わずスマートフォンだけで出店できるシステムも提供し、出店のハードルを低くするようにしている。

個人だけでなく、大手もABCマート、マツモトキヨシ、コナカ、オートバックスセブン、大黒屋なども出店した。

*ヤフーショッピングは「eコマース革命」を旗印に出店料・ロイヤルティーの無料化、ヤフージャパンのトップページとの連携による集客強化、スマートフォン向けページの改善、クーポン機能提供、出店の摩擦係数をゼロにするツール「ストアクリエーター」の提供などで出店者やユーザー獲得に力を入れる。1月末に9万店を超える出店者となったが、50%強が法人、50%弱が個人となっている。

*ヤフーは国内携帯電話4位のイー・アクセスを親会社のソフトバンクから買収し、スマートフォンを取り込みながらインターネットサービスと通信サービスを組み合わせ、ネット広告やネット通販の拡大を計画する。

*ヤフーのショッピング事業には「Yahooショッピング」(総合モール)、LOHACO(日用品)、スマートキッチン(冷凍・冷蔵食品)などのサイトがある。

LOHACOは2012年10月にアスクルとヤフーが共同で立ち上げ、「三越伊勢丹」や「無印良品」、「ターリーズコーヒー」など人気ショップを散り込み、1回の注文を各社分まとめて配送するサービスを提供し、受取る手間と配送料の負担を軽くする。アスクルの物流網を活用し初年度年商180億円・黒字化を目標としたが、初年度(13年5月期・実働約6ヶ月)は売上21億円、営業赤字13億円と目標との乖離は大きなものとなった。

アマゾンや楽天の壁は大きなものがあるようだ。

 

アマゾンジャパン・・・

*アマゾンは数千万点に上る商品を自社で仕入れ、在庫を持って価格を決め、低価格でユーザーに自社の倉庫から商品を届ける。そして、レコメンデーション(お勧め)機能などあらゆるデジタル技術を駆使し、ユーザーの囲い込みを図る。このビジネスモデルが基本であるが、電子書籍リーダーのキンドルやクラウドサービスなども高い成長率となっている。

さらに自社のフルフィルメント機能を活用したマーケットプレイスビジネスにも力を入れ、日本国内の売上は今回未発表であるが、マーケットプレイスを含めた流通総額は1兆円を超えたと見ている。

*各社の出店業者争奪戦は激しいものがあるが、アマゾンは今年3月の時点で16万を超える出店者を集めたという。現在も大口出店者に対しては月額4900円の費用を3ヶ月間無料のキャンペーンを行い、さらに法人出店者に対しては急な仕入などに対して必要な資金を最大5000万円まで融資する「アマゾン・レンディング」サービス(年利8.9%~13.9%、元利均等返済・期間3ヶ月ないし6ヶ月)を開始した。

楽天も最大3000万円まで運転資金を融資するサービスを開始し、ヤフーの出店料無料などとともに出店者に向けたサービス競争はただならぬ様相となってきた。

そして、最大のサービス競争が当日配送という物流合戦となった。

 

その他・・・

マーケットプレイスは他にもスタートトゥデイのようなファッション特化型などがあるが、この3月にはリクルートも新たにスタートさせた。

リクルートライフスタイルが運営主体となって「ポンパレモール」をオープンし、約1000店舗でスタートしている。リクルートは多くの情報媒体を持っている。傘下の6000万人が利用する旅行予約サイト「じゃらん」や4000万人が利用する飲食情報・予約サイト「ホットペッパーグルメ」などとポイントを共通化し市場開拓を計画する。システム利用料を他社の半分程度の2.5%に設定し、出店者を増やす計画だ。

 

出店者は、もはやどのマーケットプレイスに出店するかではなく、どのマーケットプレイスにも出店する。

リクルートの「ポンパレモール」にも手芸関係の店は10店舗ほど出ており、どこでも見かける店舗もある。

在庫を共有化し、どこからアクセスされても対応できる小売店がオムニチャネルの時代に適応できるのだろう。

 

以上