レポートNo60 2012.9.27  <倉林 勝>

情報通信白書&電子商取引に関する市場調査

平成24年版情報通信白書(総務省)のうち「インターネットの普及状況」と電子商取引に関する市場調査(経済産業省)のうち「BtoC-EC市場規模」を整理してお届けする。インターネットの利用者は9610万人、人口普及率は79.1%となった。60歳以上の利用は増加傾向にあるが、世代間の差はまだ存在する。利用目的の最大のものは「電子メールの受発信」である。2011年のBtoC-EC市場規模は前年比108.6%増の8兆4590億円となった。「医薬化粧品小売業」「衣料・アクセサリー小売業」「食品小売業」が順調に成長している。

 


平成24年版情報通信白書(総務省)のうち「インターネットの普及状況」と平成23年度我が国情報経済社会における基盤整備(電子商取引に関する市場調査)のうち「BtoC-EC市場規模」を抜粋整理する。

 

情報通信機器の普及が全体的に飽和状況の中、スマートフォン保有が急速に増加

H23年末の情報通信の普及状況をみると、「携帯電話・PHS」及び「パソコン」の世帯普及率は、それぞれ94.5%、77.4%となっている。また、「携帯電話・PHS」の内数である「スマートフォン」は29.3%(前年比19.6pts増)と急速に普及が進んでいる。

 

インターネット利用者数、人口普及率の双方が昨年に引き続き増加

H23年末のインターネット利用者は、H22年末より148万人増加して9610万人(前年比1.6%増)、人口普及率は79.1%(前年比0.9pts増)となった。また、端末別インターネット利用状況をみると「自宅のパソコン」が62.6%と最も多く、次いで「携帯電話」(52.1%)、「自宅以外のパソコン」(39.3%)となっており、スマートフォンは16.2%となっている。

 

H23年末における個人の世代間別インターネット利用率は、13~49歳までは9割を超えているのに対し、60歳以上は大きく下落している。また、世帯年収別の利用率は、600万円以上で8割を超えており、世帯年収の低い区分との利用格差が存在している。

また、利用頻度でみると、6割弱が「毎日少なくとも1回」利用している。

都道府県別にみると、大都市のある都道府県を中心に利用率が高く、平均以上の利用率の都道府県は、北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、奈良の9都道府県となっている。

利用端末別にみると、スマートフォンの利用率で20%を超えているのは東京、神奈川で共に23.7%となっている。

 

インターネットの利用目的については、家庭内からの利用は「電子メールの受発信」が70.1%と最も高く、次いで「ホームページ・ブログの閲覧」「商品・サービスの購入・取引」となっている。また、世代別にみると、40歳代までの方が50歳代以上に比べ、インターネットの各種機能・サービスの利用に積極的であることがうかがわれる。

 

インターネットで購入する際の決済方法をみると、「クレジットカード払い」が57.7%と最も高く、次いで「商品配達時の代金引換」「コンビニエンスカウンターでの支払」「銀行・郵便局の窓口・ATMでの支払」となっている。

また、15歳以上のインターネットでの商品・サービス購入者における、1回あたりの平均購入上限金額をみると、家庭内全体では22361円となっており、利用する端末別にみると自宅のパソコンが最も高く、次いで、スマートフォン、携帯電話となっている。

 

インターネットショッピングの利用者の半数近くが検索を活用して購入するなど、検索⇒複数サイトの比較などインターネット特有の購買プロセスが一般化している。

(この項はH23年版情報通信白書による)

 

2011年のBtoC-EC市場規模は、2010年の7兆7880億円と比較すると、対前年比108.6%の8兆4590億円に達した。

2008年~2009年の成長率が110.0%、2009年~2010年の成長率が116.3%であることを鑑みると、市場規模は堅調に成長しているものの、成長率は鈍化したといえる。EC化率は2010年の2.46%と比較すると、0.37pts増の2.83%に達しており、商取引の電子化は引き続き進展しているといえる。

 

2011年のBtoC-EC市場規模の拡大に寄与した業種として、対前年比の観点でみると、「医薬化粧品小売業」(前年比134.6%)、「衣料・アクセサリー小売業」(前年比128.6%)、「食料品小売業」(前年比122.0%)などの業種は対前年比が大きく、順調な成長を遂げている。

これらの業種は近年、継続的な高成長を遂げており、2007年~2011年の5ヶ年で比較すると、「医薬化粧品小売業」では2007年の1410億円から2011年の4200億円に成長(5ヵ年で297.9%)、「衣料・アクセサリー小売業」では2007年の570億円から2011年の1440億円に成長(5ヵ年で252.6%)、「食料品小売業」では2007年の2510億円から2011年の5320億円に成長(5ヵ年で212.0%)しており、5ヵ年で2倍以上に市場規模を拡大している。

 

同様に、市場規模の増減の観点でみると、「総合小売業」(前年差1710億円増)、「宿泊・旅行業・飲食業」(前年差1690億円増)、「医薬化粧品小売業」(前年差1080億円増)などの業種は対前年差が大きく、これらの業種はBtoC-EC市場規模の底上げに寄与している。一方、「製造業」では前年差190億円減、「運輸業」では前年差20億円減と市場規模が縮小している。

 

さらに、EC化率の増減の観点でみると、「宿泊・旅行業・飲食業」(前年差0.82pts増)、「医薬化粧品小売業」(前年差0.79pts増)、「自動車・パーツ・家具・家庭用品・電気製品小売業」(前年差0.79pts増)、「総合小売業」(前年差0.56pts増)、などの業種は対前年差が大きく、これらの業種では、商取引の電子化が伸展している。

 

BtoC-EC市場規模の構成比の観点でみると、最も構成比が大きい業種は「情報通信業」(構成比24.0%)であり、次いで「総合小売業」(構成費21.1%)、「宿泊・旅行業、飲食業」(構成比15.0%)、「自動車・パーツ、家具・家庭用品、家電製品小売業」(構成比14.7%)となっている。これら4つの業種を合計すると、日本におけるBtoC-EC市場規模の74.8%を占めることになる。

 

BtoC-EC市場規模の成長要因として、マクロ的な観点からは、日本経済の景気概況の変化、及び東日本大震災を受けた消費意識・消費行動の変化の2点が挙げられる。

日本経済は2008年以来続く金融危機であるが、2010年には回復基調に転じている。内閣府の「国民経済計算」によると、実質・暦年の家計最終消費支出は2008年には対前年比98.6%、2009年には対前年比98.8%とマイナス成長であったのに対して、2010年には対前年比102.8%とプラス成長に転じている。しかしながら、2011年には対前年比99.8%と再びマイナス成長に転じており、こうした家計の消費実態の変化がBtoC-ECを含め、商取引全体に影響していると考えられる。

 

2011年の家計最終消費支出のマイナス成長には、東日本大震災による消費意識・消費行動も関連していると考えられる。「コンサート等のイベントへの参加」、「日常の食品・飲料・生活用品のまとめ買い」、「旅行の計画・予約」、「ショッピング(日常品以外)」などを躊躇・控えようとする消費意識が確認されており、実際の消費に対しても影響を及ぼしていると考えられる。

 

③EC市場動向

<総合小売業>

「総合小売業」では、通信販売事業者、百貨店、総合スーパーなどを中心にBtoC-EC事業が好調である。

通信販売事業者では、取扱商品のラインナップ拡充やネット限定オリジナル商品・ブランドの開発などの施策を展開し、売上高に占めるインターネット売上の比率が伸びている。千趣会の2011年度通販事業売上(カタログ+インターネット売上)に占めるインターネット売上の割合は、昨年度の60%からさらに伸長して64%に達している。

また、各社では配送料を無料化するキャンペーンを実施したり、恒常的に配送料を無料化する施策を展開する動きが活発になっている。アマゾンジャパンでは期間限定や商品限定などのキャンペーンとして配送料の無料化を実施していたが、2011年11月からは「通常配送」及び「コンビニ受取」の配送料を恒常的に無料化している。この他に配送に係るサービスとして、「当日お急ぎ便」、「お急ぎ便」、「お届日時指定便」などの有料サービスも提供しており、購入者の配送ニーズに対応する取り組みを強化している。

こうした動向を背景に、「総合小売業」における2011年のBtoC-EC市場規模は1兆7820億円(前年比110.6%、前年差1710億円増)に達している。

 

<衣料・アクセサリー小売業>

「衣料・アクセサリー小売業」では、総合ファッションモール、SPA事業者などを中心にBtoC-EC事業が好調である。

特に衣料分野では、高級ブランド・マスブランドともにインターネット販売に対する抵抗感がなくなり、自社サイトの開設や大手ショッピングモールへの出店など、複数のチャネルで商品を販売する動きが一般化してきている。その中でも、スタートトゥデイに代表される総合ファッションモールでの取扱が伸長している要因としては、インターネット販売に関する一連の業務(受発注、販売、決済、配送など)に対応している点が挙げられる。こうした“販売する場”だけに留まらず、“販売するノウハウ”の提供にも対応していることで、他のチャネルとは一線を画した位置付けを築いていると考えられる。

また、スタートトゥデイでは、返品サービスを2011年4月から開始している。返品サービスの利用状況は、サービスの開始以降横ばいで推移しており、実際に返品サービスを利用するユーザー数は少ないものの、このようなユーザー視点でのサービスの提供が、ユーザーの裾野の拡大にも結びついているという。

こうした動向を背景に、「衣料・アクセサリー小売業」における2011年のBtoC-EC市場規模は1440億円(前年比128.6%、前年差320億円増)に達している。

 

<食料品小売業>

「食料品小売業」では、従来から好調であった、「お取り寄せ品」や「訳あり品」に加えて、飲料水や米などの「日用品」もインターネット購入の対象商品として定着してきている。これは、購買行動としての定着の他に、2011年3月に発生した東日本大震災を受けて、店頭での在庫が不足していた点、まとめ買い需要が高まった点、などが後押しする形となって浸透したと考えられる。

このように、インターネット購入の対象商品があらゆる食料品にまで拡大しつつある中で、特に「日用品」や「生鮮品」などの購入チャネルとしてネットスーパーの活用が拡大している。ネットスーパー各社では取扱商品のラインナップや対応店舗・配送エリアの拡充を図っており、イトーヨーカドーネットスーパーでは約3万点の商品を販売している。また、日々使うサービスとして配送料の低価格化も進みつつあり、イトーヨーカドーネットスーパーでは80円(6000円以上購入で無料)、イオンネットスーパーでは105円(5000円以上購入で無料)となっている。

こうした動向を背景に、「食料品小売業」における2011年のBtoC-EC市場規模は5320億円(前年比122.0%、前年差960億円増)に達している。

 

<医薬化粧品小売業>

「医薬化粧品小売業」では、化粧品や健康食品・サプリメントなどを中心として、例年と同様、好調に推移している。化粧品では、売上高に占めるインターネット売上の比率が伸びている。「総合小売業」では多様な商品を取り扱う通信販売事業者のインターネット売上比率を確認したが、化粧品専売の通信販売事業者であっても、大手事業者の中には約半数をインターネット売上が担っているところもある。

また、化粧品や健康食品・サプリメントに加えて、健康に関連した食料品、日用品、家電などの幅広い商品を取り扱っているドラックストア型の事業者も好調である。一例を挙げると、楽天市場によるショップ・オブ・ザ・イヤー2011(総合の部)では第1位を「爽快ドラック」、第2位を「ケンコーコム」が受賞しており、品揃えの豊富さ、価格の安さ、生活に欠かせない商品群、などの点がユーザーから評価されている。

こうした動向を背景に、「医薬化粧品小売業」における2011年のBtoC-EC市場規模は4200億円(前年比134.6%、前年差1080億円増)に達している。

 

<その他>

その他の業種横断的な動向として、2010年に引き続き、2011年もスマートフォンの活用が伸展した。大手ショッピングモールを運営している楽天、ヤフーでは、共にスマートフォン、タブレット向けのサイト構成(ユーザーフレンドリーなレイアウト)への対応や専用アプリケーションの開発・提供に注力している。この結果、ヤフージャパントップページにおけるスマートフォン経由でのページビュー数は5倍に成長した。

 

日本・米国・中国の消費者の3ヶ国間の越境EC利用率は、昨年度と比較して減少している。

日本の消費者による米国・中国からの越境ECによる購入額は145億円(前年比41.9%)、米国の消費者による日本・中国からの越境ECによる購入額は1075億円(前年比84.9%)、中国の消費者による日本・米国からの越境ECによる購入額は2331億円(前年比107.1%)であった。

越境EC利用者の今後の利用意向は、米国では増加傾向にあり、中国では高水準で推移している。

2020年時点での日中間の越境EC規模は、最も拡大する仮定をおいて推計した場合、約2兆円に達すると推計され、日中間における越境ECは大きな可能性を有している。

 

②6ヵ国における電子商取引等の利用動向

日本、米国、中国、フランス、ベトナム、インドネシアの消費者のインターネット及び電子商取引(EC)の利用動向の調査

 

<インターネット利用動向>

インターネットアクセス利用端末

インターネットにアクセスする際に利用する端末の中心はパソコンとなっている。一方で、携帯電話・スマートフォンを利用することのある消費者の割合は、日本(61.7%)、米国(47.8%)、フランス(52.8%)と比べて、中国(80.0%)、インドネシア(79.3%)、ベトナム(74.5%)の方が高くなっている。

インターネットの主な利用場所

6ヵ国とも自宅で利用する消費者の割合が最も多い。日本(90.7%)、米国(85.7%)、中国(71.2%)、フランス(91.3%)、インドネシア(67.2%)、ベトナム(67.4%)であるが、中国、インドネシア、ベトナムでは3割近くの消費者が主に会社・学校を利用している。

1日当たりのインターネットの利用時間

米国、中国、インドネシア、ベトナムでは、3時間以上利用する消費者の割合が6割を超えており、日本(32.0%)、フランス(40.6%)と比べて、利用時間が長い傾向にある。

 

<EC利用動向(過去1年間にECを利用した消費者が対象)>

EC利用端末

6ヵ国とも9割超えの消費者がPCを利用してECを行っており、PCが利用の中心となっている。一方で、ECの際に携帯電話・PHS、スマートフォン、タブレット・電子書籍端末を利用する割合をみると、日本(24.0%)、米国(31.8%)、フランス(23.4%)と比べて、中国(79.0%)、インドネシア(50.0%)、ベトナム(46.1%)の方が高い。

ECの利用頻度

週1回以上ECを利用する消費者の割合は、中国(42.1%)、ベトナム(29.3%)、インドネシア(23.0%)、米国(17.8%)、フランス(9.1%)、日本(7.4%)の順となっている。

ECの利用経験年数

EC利用経験が3年以上の者が、日本・米国では6割を超え、中国・フランスでは5割程度を占めている。インドネシア・ベトナムでは、EC利用経験が2年未満の者が6割~7割を占めている。

EC購入商品

ECで購入される商品には共通性が見られ、6ヵ国全てにおいて、書籍・雑誌(電子書籍は除く)と衣料・アクセサリーが上位3位までに入っている。

書籍・雑誌に関しては、各国とも全般的に雑誌より書籍の購入割合が高い傾向にあり、書籍の中でも、ビジネス、コミック、文学、生活のジャンルの購入割合が大きくなっている。

衣類・アクセサリーに関しては、各国ともメンズ及びレディースの服&ファッション小物の購入割合が大きくなっている。

EC利用理由

店舗までの移動時間、営業時間を気にせず買い物ができる点が中国以外の5ヶ国で1位、中国で2位に挙げられており、ECの持つ利便性が評価されている。中国での1位は実店舗で買うよりも価格が安いからとなっている。

 

 

経済産業省の電子商取引に関する市場調査は今回の平成23年度版で14回目となる。

総務省の情報通信白書とともに、概略を整理した。

以上