レポートNo41 2012.2.14  <倉林 勝>

アメリカクラフト事情

(A)2012 CHA Winter Conference & Trade Show

昨年はロスのダウンタウンで開催されたが、今年は例年通りアナハイムコンベンションセンターで開催されたが、CHA(Craft & Hobby Association)も状況が厳しいのか2011年の市場調査を中断した。そのため例年行われていた市場調査セミナーがなくなったため、市場規模等の数値などを知ることは出来なかった。また、CEOやマーケティング担当役員も変わり、日本ホビー協会との連絡会も中止された。10日前に決まったという新CEOのアンドレ氏は、まだ様子がつかめないだろうが、アメリカ小売市場が元気になってきたのでホビー&クラフト市場も良くなるだろうと楽観視していた。


2010年の全米ホビー&クラフト市場は2兆9000億円規模となったが、セグメントを広げたためとも思える。上位のカテゴリーはウッドワーキング、ドローイング、フードクラフティング、スクラップブッキング&メモリークラフト、ジェリーメイキング、フローラルデコレーションであるが、CHAのトレードショウではスクラップブッキング&メモリークラフトとジェリーメイキングなどはあるが、他のクラフトは展示されない。その為に活気を欠いているのかも知れない。ジェリー、毛糸、キルトなどカテゴリー別に大きなトレードショウがあるため、CHAに出る企業も限られているようだ。

 

2012年のCHAトレードショウは出展ブース数も減少し、来店客数も減少しているように見える。空きブースも目についたが、コミュニティパークという名の商談や休憩スペースが多く目についた。

パグパイプの隊列がメイン通路を演奏しながら開場の雰囲気を盛り上げ、初日は受付に多くの来場者が列を作るが、二日目以降は同一来場者が多く受付も暇である。三日目以降は来場者も減り、4日目は出展業者が片付けの時を待っているだけだ。

 

会場の半数がスクラップブッキング関連であるが、全体に縮小気味に思われる。スクラップブッキング&メモリークラフトの市場は2009年の2384億円から2010年は1450億円と落ち込んだが、2011年は更に低下したのではないかと思われる。しかし、ペーパーの在庫が大量にあるようで、ペーパーを使用したクラフトが多く目につく。関連としては、多くがカードメイキング(グリーティングカード)を取り上げている。あるいは、クリカット(Cricut・・・ペーパーからモチーフを切りぬく機械)でモチーフを作り、単にモチーフを平面的に利用するのではなく、リースや鳥など立体的な表現をしているものも多く見た。さらに、ペーパーとファブリックを同じデザイン、カラーで作り色々な組合せを作るなどが見受けられた。

悪いは悪いなりに変化をさせて行く発想・アイディアが多く目についた。

 

スクラップブッキング&メモリークラフトが減った分を埋めているのは、繊維関連が多い。

キルト、ファブリック、毛糸、パターン、刺繍、ニードルポイント、ボタンなどが例年に比べ多くなっている。出展しているクロバーニードルクラフト(USA)の話でも手編み、ソーング関連の動きは好調とのことであった。

毛糸は子供関係やインテリアなどの提案は表現が豊かで興味を引く。

 

クラフトで目についたものは、ペイントとレジンだ。また、ボタン関係も目に付く。

ペイントはタトゥー(刺青)からボディペイント、ガラス器にステンドグラス風な絵付け、インテリア用途のステンシルなどが見られた。

レジンはボトルキャップ(ビンの蓋)をレジン加工してアクセサリーにしたり、木工の台にレジン加工したりするものから、アンティック風な工芸品的アクセサリーまでいろいろ出ていた。

 

ボトルキャップはコーラやビールビンなどに使う大きさ、ビン詰めに使われる大きなもの、クラフト用に作られた小さなものなどが用意され、裏側にはめ込む各モチーフなども用意されている。

通常の大きさ、大型のものはペンダントなどに、小型のものはチェーンに数個つけてブレスにしている。ビンの蓋などと思うが、日本から同行のクラフトの先生は教室で使用するとのことで購入していた。

 

ボタンは衣料用だけでなく、クラフトのパーツとして色々な使われ方がする。スクラップブッキング、カードメイキングのパーツ、あるいはバックなどへ組み合わせてワンポイントに、あるいはリボンなどと組み合わせてアクセサリーになどと幅広くクラフト分野で使用されている。

 

その他、メタルスタンプ、手作りフェルトでの動物人形作りなどが興味を引く。

メタルスタンプは丸、四角、動物のモチーフなど各板状の金属に文字を打ち、それをレジンなどで加工してアクセサリーなどにする。

手作りフェルトは綿状のものをシリコンの型に入れて糸は使わず、針で成形して動物を作る。

 

最大のブースを使用しブランド別に素晴らしい展示をするのはEK Success Brandsだが、今回はPlaid Enterprises も力を入れている。

両社ともにマーサ・スチュワート・クラフト(Martha Stewart Crafts)を取り上げている。また、両社ともにスクラップブッキング関連は少ない。流れの中で変化させているのだろう。

EK Successはマーサスチュワート、アメリカンガールス他多くのブランドを展示する。Plaid Enterprisesも同様にブランド別のコーナー展開となっている。

 

今回のCHAショウでの大きな流れはミックスド・メディア(Mixed Mediaである。混ざり合った手法というような意味であるが、多くのものが一言でいえばミックスド・メディアで表現されている。

「ミックスド・メディア」という言葉は出展するクラフト関係の出版社から聞いた。出版社によると多くのクラフトが、色々な素材・材料を使用し、色々なテクニックを使って表現することが大きな流れであるとのことだ。この出版社が出す書籍も、そのような表現で構成されている。

例えばカードメイキングにおいても材料はペーパーだけでなく、ファブリック、毛糸、ボタン、リボン、ビーズ、フェルトなど様々な素材が、貼る、縫う、編むなどの手法を組み合わせてクラフト作品に仕上げている。

そのような目線で各ブースに展示される作品を見ると、単にペーパーだけとかファブリックだけとかは少なく、様々な、自由な発想で組み合わされている。いろいろなパーツを自由に組み合わせることで豊かな表現が生まれてくる。ここでは衣料用のパーツもクラフトパーツとして使用される。時として、時計のパーツ、歯車や文字盤、針なども使われ、そのようなものもパーツとして販売されている。

また、イメージとしてはアンティック調が人気のようで、銅色や錆びたような色を使うものが目につく。

そして、平面的なものから立体的なものに変わりつつある。それらのモノを壁飾りなどに使うものも流れの一つに見える。

 

左はミックスド・メディアをベースにした各カテゴリーの出版物。

右はMixd Media Techniques using ICE Resinと書かれたレジンのカタログ。このブースではアンティックなイメージのアクセサリーなどを単にレジンだけでなく、写真、時計部品、ビーズ、鎖、リボン、ボタン、スパンコール、メタルパーツなど様々な組合せで作品を展開し、芸術性を高めている。

 

CHAのトレードショウは年々低調になるように思えるが、それでも世界最大のショーであり続ける。

常に何かが少しずつ変化し、大きな流れを生んで行くのだろう。

 

 

(B)クラフト専門店

Piecemakers (Costa Mesa,California)

CHAがアナハイムで行われる時には必ず訪問する店である。キルトを始めとするカントリーテーストのクラフトと雑貨を扱い、1店舗ながら独特の雰囲気をかもしだす。1978年に20坪ほどの店舗で始まり、1985年にコスタメサの住宅街の中に現店舗を310坪(2層)でオープンした。

今回は入口部分にキャンディやクッキーの売場が新たに出来て、また、従来のクラフトだけでなく、料理やクッキー作りなどの教室も充実していた。

各フロアに小さな部屋を沢山作り、その中をテーマごとに奇麗に飾りつける。聞くところによると1日25人から30人程度のお客で近時は減少傾向にあるようだが、月に100近くある教室が収益となっているとのことである。また、最近は本、パターン、カレンダーなどの出版物に力を入れているとのことである。

教室は幅広く、キルト、ペーパー、刺繍、ソーイング、人形、フラワー、ニット、かぎ針、石鹸、ビーズ、粘土、子供教室、クッキング、アートなど幅広く展開し、それぞれのカテゴリーで5~10程度のクラスに分かれ、中には日本の手まりなどもある。1レッスン40~50ドルほどの料金のためか、比較的裕福そうな人たちが集まっている。

 

Oh Scrap (Costa Mesa,California)

2008年3月に約40坪でオープンしたスクラップブッキングの専門店。

経営者の女性は、スクラップブッキングの講師や教室を運営していたが、3年前に開業した。クラフトチェーン店との差別化から、品揃えはハイクラス商品を中心にしている。著名な講師の教室が人気を得ているとのことだ。年商2000万円程度とのこと。

 

TALL MOUSE (Placentia California)

アート、クラフト&カスタムフレーミングをメインに現在4店舗を近隣に展開している。

1966年に創業し小型店舗から大型店舗へ変えてきた。訪問の店舗は2011年3月に開店した店舗で220坪の規模である。店内に樹木を配置し、それにディスプレーを施す。テーブル什器と棚什器を組み合わせ、ゆったりした店舗である。

クラフトを中心にファブリックや毛糸も扱い、小型ながら総合的な品揃えとなっているが、売上は苦戦しているとのこと。

教室はペインティング、ニッティング、ソーイング、ドローイング、かぎ針編み、エッグアートなどを行う。

店内にはPrincess Tutuと呼ばれるコーナーが数か所あって力を入れている。Tutuはバレリーナの短いスカートを意味し、子供のバレー教室やハロウィンなどの多く使われるそうだ。6インチ幅、25ヤードのナイロンチュール(1巻き5.99ドル)の丸巻きが多色展開され、作品も多く飾られる。ピーク時には月商1000万程度の売上があるという。

上手に利用すれば、日本でもパンツの上に付けるオーバースカートなどに利用出来そうだ。

また、緑のクロバーをモチーフにしたセント・パトリック・デー(アイルランド人にとってクリスマスより盛り上がるといわれる)の売り場も作られている。

 

The Calico House (Placentia California)

Calcoは日本ではキャラコとよばれるが、元はインドカリカット産の綿布を差し、現在の言葉に転じた。

キャリコハウスは1981年に創業し、1年半前に現在の場所に移転した、キルトショップとしては大型の店舗である。

100坪の売場に90坪の教室を持ち、約3000反のファブリックを並べている。

1台350万円のキルトマシーンを店内に2台、教室に2台設置し、教室では有料で貸す。

教室は週4日間程度開催し、サークル活動に場所を提供することもあるようだ。

キルトマシーンはデザイン上の線にそってキルティングするが、ソフトは従業員が作り、また、フリーハンドで行うことも多いそうだ。

ジョアンのファブリックが中国製に変わる中で、専門店としてはアメリカ製を中心とした品ぞろえになっている。ホフマン・カリフォルニア、MODA、ROBERT・KAUFMANなどが中心で、VIP・EXCLUSIVEや日本のルシアンなども置かれている。大型チェーン店との差別化を、商品とサービスで行っているのだろう。

 

JO-ANN &Michaels

ジョアンもマイケルズも写真撮影は禁止された。

 

ジョアンは2006年には838店を有したが、小型店を閉鎖し大型店にシフトしてきた。2010年には746店まで縮小されたが、2011年1月末には761店まで拡大した。

小型店は516店舗で1店舗約500坪、平均売上1億8000万円(1ドル=100円)、大型店は235店舗で1店舗約1100坪、平均売上4億8000万円となっている。

大型店では小型店にない教室を展開している。

ジョアンの2010年1月末期売上は1990億円で、ソーング関係の売上が52%あって年々比率が高まってきた。2011年以降はアニュアルレポートを出していないため、数値は不明だが2000億円は超えているだろう。

訪問した店舗は大型店であるが、少し乱雑なイメージで、全体に暗く活気が感じられなかった。

主力のファブリックにアメリカ製は見当たらない。中国製がほとんどで、一部韓国製、パキスタン製などが並び、低価格化を強く打ち出している。インテリアファブリックも多く扱うが、これも中国製や台湾製が多く、アメリカ製はウェバリーのみであった。

売場では毛糸売場が拡大しているように見受けた。

教室はソーング、キルト関係が多いが、ペインティング、編物&かぎ針編み、ペインティング、ペーパークラフト、それにケーキデコレーションがある。また、子供対象の教室もある。1レッスン40~50ドルが平均的価格である。

店内にスーパー・ウイークエンド・セールと名付けられた12ページの小冊子が置かれているが、30%~50%の割引で低価格指向を強く感じさせる。全品20%割引のシニア・ディスカウント・デーも用意され、先生に対する15%割引などもある。

 

マイケルズは2011年1月期の売上は4031億円(1ドル=100円、前期比103.7%)となり、全米小売業の80位となった。ほぼ同額の売上はイケアUSA、バックのコーチなどである。

2011年2月~10月(9ヶ月間)の売上は2806億円(前期比103.9%)と増収となった。マイケルズの店舗数は10月末時点で前年から17店舗増えて1063店舗となった。それに関連会社アーロン・ブラザーズを135店舗運営している。

 

ショップツアーのスケジュールにマイケルズは含まれていなかったが、バスの車窓から新しいモールが目に入り、入口部にマイケルズがあったため立ち寄った。最新の店舗である。

一時は荒れた売場が良く目についたマイケルズであったが、この店は新しいだけ整理も行き届き、初期のイメージが感じられた。現在はアート&クラフトストアーとなっているが、初期はアート、クラフト、フラワー、フレームストアとなっていた。この店は入口正面にフラワーの売場が100坪程度あって充実し、横にはフレームの売場が200坪ほどあって力を入れている。

レジを打つお客の半数がフラワーを購入していたから、人気があるのだろう。

クラフトはEK-Succes、Martha Stewart、Michaelsと組んだものが、コーナー展開ではないが多く見られた。また、毛糸も以前より多く見られ、クロバーの竹針「匠」が置かれていた。日本製としてはTOHOビーズも品揃えされていた。

 

(C)雑感

初日、ロス空港到着後昼食を兼ねてサウスコーストプラザに立ち寄った。サウスコーストプラザは8万坪を超える全米トップクラスのショッピングセンターで、4つの百貨店を核に高級専門店が並んでいる。バーゲンセールが終わったためか、買い物をする人は少ないように感じたが、土曜日とあって多くの人がいる。リーマンショック後の2009年1月は閑散としていただけに、この賑やかさが嘘のようだ。

 

住宅市場は低迷しているようだが、失業率も8.3%まで低下し、ダウ工業株もリーマンショック後の高値を更新している。2011年の個人消費も前年から4.7%増加するなど、小売業も高級百貨店、専門店などを中心に順調な回復を見せている。アメリカ景気の底堅さが感じられる。

しかし、一方で「ウォール街を占拠せよ」という1%対99%のデモも活発で、中間層の減少が社会問題と化している。オバマ大統領も中間層の増大を大きなテーマとし、輸出倍増、国内生産メーカー優遇策など打ち出しTPPにも力を入れる。

 

クラフト(手作り)は富裕層や低所得者ではなく、圧倒的に中間層が行うものと考えると、市場の低迷が理解できる。その中で、マイケルズやジョアンなどの大型チェーンが売上を伸ばしていくと、個人経営の店が疲弊し、CHAショーの参加者も減ってくるのではないかと推測される。

しかし、それでもアメリカのクラフト市場は大きい。アメリカには多くの記念日があって、プレゼントを交換する機会も多いのだろう。そのプレゼントが手作り品ということも多いのだろう。

ウォルマートやターゲット、あるいは今回覗いたダラーツリー(1ドルショップ)などにはセレブレーション(お祝い)売場が必ずあって、カードやラッピングのコーナーを大きく取っている。

また、手作り品の売買サイトであるエッツィーも大きく拡大している。

CHAショーでカードメイキングが急増したり、アート風のクラフトが増加しているのも、そのような理由かも知れない。

大型チェーン店や専門店で開催されている教室を含めて、アメリカにはクラフトの土壌がまだしっかりとあるようだ。

 

 

以上