レポートNo09 2010.12.27  <倉林 勝>

経済見通し2011年、新たな10年が始まる

21世紀の最初の10年が終わり、新たな10年が始まる。

この10年は米国同時多発テロで幕を開け、サブプライム問題から発生した金融恐慌で世界は混乱し、後遺症が残る中で欧州経済の危機が継続している。中国やインドの新興国の台頭はアメリカ一極から多極化へ向かう予兆を見せている。

 

2011年がどのような年になるなか、日経ビジネス、東洋経済、ダイヤモンドの経済3誌から

国内景気、米国・欧州・中国経済、為替、その他流通の個別項目を抜粋要約し比較できるように

お届けする。

 


21世紀最初の10年が終わり、新たな10年が始まり、平成も23年目を迎える。

21世紀最初の年である2001年9月11日の米国同時多発テロ事件はこの10年を象徴する出来事となった。この事件を契機にテロとの戦いに踏み込んだ米国はイラク戦争を開始し、アフガニスタンを空爆し未だ泥沼から抜けることが出来ない。

2007年頃からサブプライムローン関連の巨大損失が金融機関を襲い、ついに2008年9月15日には米証券大手のリーマン・ブラザーズが米国史上最大の負債総額6130億ドルで倒産し、世界を金融恐慌の淵に立たせた。金融機関を救済するために各国は金融を緩和し多額の財政出動を行い、ばらまかれた紙幣は資源や新興国へ流れ、ドバイやギリシャに波及して行く。

2010年1月12日にギリシャの財政問題が表面化しユーロの危機が起こり、11月にはアイルランドに飛び火し、ポルトガルの危機も囁かれる。

日・米・欧の先進諸国の経済が停滞する中で、中国、インドなどアジアを中心とした新興国の台頭は勢を増し、大きな歴史の転換点を迎へ米国一極から多極化に向かいつつある。

 

例年、京都清水寺で発表される今年の漢字は「暑」に決まったが、2位は中国の「中」3位は不信の「不」であった。本当は国内外から冷や水を浴びせられる「冷」ではないだろうか。

日本の政治は政権闘争に明け暮れ劣化していく。21世紀を跨いだ森政権を受け継いだ小泉政権は2001年4月から2006年9月までおよそ5年の長期にわたったが、その後の安倍、福田、麻生政権は1年で終わり、自民党の終焉を迎え民主党に政権が移行した。期待を負った民主党であったが、鳩山政権は普天間や金の問題などでわずか9ヶ月後に管政権に引き継がれた。しかし管政権に変わっても迷走は続き、政争に開け暮れ政治の混乱は続く。

痛みを伴うが規制をなくし開かれた日本を目指す「ニュー開国」か、適度に住みやすい日本で他国の文化や出来事に興味をなくし、価値観を受け入れることなく、ゆるやかに衰退して行く「パラダイス鎖国」を目指すのか、いずれ選択を迫られることになるだろうが、やはり「何も決めない、なにもしない」漂流日本を続けるのだろうか。

NHKの大河ドラマが鎖国から開国、開国から富国強兵へ向かう日本を描く「竜馬伝」「坂の上の雲」を取り上げるのもこの時代を象徴しているようだ。

 

高度な暦を持つ古代マヤ人の作った長期暦は2012年12月21日を人類最後の日としている。

地球温暖化などの環境問題は解決の糸口を見つけられず、食料や水など人類が生存するための基本資源の争奪戦もはじまりつつある。

2012年には世界各国で政権の交代がおき、日本の周辺事情も大きく変化する。

尖閣問題やノーベル平和賞に対する中国の対応、北朝鮮の韓国砲撃など「新冷戦時代」も囁かれる。次の10年がどのように変化していくのか予断は許されないが、先ずは2011年経済を各ビジネス誌の予測を整理しお届けする。

 

(A)提言

<日経ビジネス・・・寺山正一(編集長)>

民活主導でニッポン大逆転・・・新経済地図の主役交代

日本の成長を阻む2つの幻想

 お上頼みの発想・・・政府の経済財政政策による安定成長

 自身喪失症候群・・・日本には中国と戦える成長分野はない

再成長を実現する3つのカギ

 脱先進国市場・・・成長だけでなく利益も「新興国」が牽引役に

 脱ハード依存・・・「システム」が日本を救う

 脱日本人男子・・・人材の「多様性」で変化に適応

止まらない円高、安定しない政治、雅拙な外交、盛り上らない内需、改善しない雇用情勢と就職難、不安材料を上げれば切りがない。

かつての延長線上に未来を期待できないことは否めない。しかし、日本には本当に成長の余力が残されていないのか。中国、インド、インドネシアなどアジアの急拡大、原子力発電や上下水道などの環境インフラ整備、世界で急騰する電気自動車市場、日本独自の技術とノウハウが求められる数多くの有力分野が未開拓のまま眼前に広がっている。

政治や為替を口にしない。成功体験を捨てて、日本企業が持つ潜在力を余すことなく生かし切る。過剰な自身喪失から抜け出して一歩踏み出せば、日本の未来像が見えてくる。

 

IMFの予測では2011年の中国のGDP成長率は9.6%、米国は2.3%、日本は1.5%の水準にとどまっている。問題は数字ではなく、成長を阻む「2つの幻想」から逃れない限り、日本が再び成長へ向かうシナリオは描けない。

第一の幻想は「政府が有効な経済財政政策を講じれば、安定成長への道が開けてくる」という先進諸国に共通する「お上頼み」の発想である。

FRBは中間選挙でオバマ大統領が敗北した直後、6000億ドルの追加金融緩和策を決定し、NY株式市場は「リーマンショック前」の株価に回復したが、この活況が実需に結びつくかといえば、疑問符がつく。日米などの先進諸国が未曾有の金融緩和に踏み切っているにも関わらず、民間設備投資、個人消費が凍結しているからだ。

米S&P500指数に採用されている企業の総資産にしめる現預金の比率は2010年8月時点で10%を上回り、日本でも実質無借金企業が5割前後に達し、2009年度末の現預金貯蓄残高は204兆円と過去最高を記録している。

一方、日本の国内設備投資は90年前半の60兆円超から半減し、平均設備年数は70年代前半の7年未満から、2000年代後半には13年超まで上昇した。

現在の日本は本当に投資対象が容易には見つからないほどイノベーションの種が枯渇しているのだろうか。「儲からないから投資しない」のではなく、「投資しないから儲からない」逆のサイクルに陥っている可能性がある。

第二の幻想は「日本にはもはや中国と戦えるような成長分野は残っていない」という、理由なき自身喪失症候群にある。経産省はリチウムイオン電池とLEDの2分野で日本が世界シェアの60%を確保すれば2020年までに49万人の新規雇用を生むと試算する。この2分野の市場規模は1兆5000億円に満たない規模だが、2020年には10倍に膨れ上がると予想されている。努力目標を掲げることは絵空事ではない。

「弟3の開国」と位置づけたTPPについて民主党は参加の判断を先送りした。「もう国には頼れない」。むしろ自身喪失症候群の呪縛から自らを解き放ち「脱先進国市場」「脱ハード依存」「脱日本人男子」の3つに舵を切ることで、民活主導で再成長を実現するニッポンのシナリオが見えてくる。

 

「新興国を制するものは円高も制する」コマツやホンダの例ではないが、利益の絶対額は先進国、成長率の高さだけ見るなら新興国、そんな「先進国幻想」は過去のものとなっている。

もう一つ、日本が復活を遂げるためにどうしても捨てなければならない常識がある。それは工場で磨きあげられた品質とコスト競争力が全ての価値を生むという、高度成長期を支えてきたハード依存の成功体験に他ならない。

社会インフラを構築する「スマートシティ」は2030年までに約41兆ドルという巨大な需要が見込まれる。上下水道で22.6兆ドル、エネルギーで9兆ドル、道路、鉄道で7.8兆ドルという新規需要を日本がいかすには、個別の技術や商品を単体売りするのではなく、ハードを組み合わせた「システム」として総合力を発揮していくことが欠かせない。

「脱ハード依存」は製造業の衰退を意味するのではなく、優れたハードをシステムとして組み合わせることで、日本の得意な省エネ技術、低公害技術、長寿命の作り込み品質が威力を発揮する。

もう一つの要素は人材で、企業を生かすも殺すも最後は人に尽きる。人材の国際化が残された最後の課題に他ならない。日本の成長の軸は今や海外に移っている。にもかかわらず、日本企業の海外現地法人社長の日本人比率は2000年の57.8%から2009年には83.6%まで高まる。日本企業の内向き人事は国籍だけでなく、係長以上の女性比率も低い。

海外市場を熟知した優秀な外国人人材、企業中心の目線に縛られない女性幹部の登用は、成長のためにも急務と言っていい。

 

世界2位の経済大国から転落した日本が、危機を千載一隅の好機として生かすことができるのか。2011年の日本は、その歴史的な転機に立つ。

 

(B)国内景気

<日経ビジネス・・・藻谷俊介氏(スフィンクス・インベスト・リサーチ)>

中国の引き締め路線修正で景気再加速へ

追加金融緩和で好転する世界経済の波をとらえよ

中国経済の動向が最重要ポイント

サービス生産と設備投資はようやく離陸を開始

マネーサプライ回復で世界の景気は改善に向かう

ギリシャ危機、米国の雇用不安など2010年の主要なニュースは欧米発であったが、最近、世間の関心が中国へシフトして来た。尖閣問題などいや応なく広義の中国問題に目を向けざるを得なくなったが、2009年の輸出先の56%がアジア、16%が米国、13%がEUとなっている日本が、遠い欧米の出来事に一喜一憂する前に分析・対応しなければならない事象は、地球のこちら側にいくらでもある。

 

経済予測でも中国経済は欧米を凌ぐ重要なファクターになっている。「中国経済は過熱している」「先進国よりも良いに決まっている」という一般的誤解を解かなければならない。過熱は都市部の不動産価格など一部の部門に限られた減少で、マクロ経済全体の景気減速は2010年春頃から統計に表れている。

日本からの主要地向け輸出額は対米、対欧が頭打ち程度であるが対中輸出は尖閣問題以前から下落し、この半年の下落ベースは年率換算20%に迫る。悪化は対中にとどまらずNIES、ASEANも日本と同様の対中輸出マイナスの影響で減速が著しい。

アジア好況で引っ張られてきた日本の外需主導景気が、変調をきたすのも無理はない。

 

中国経済全体として過熱状態ではなく、貸出しの抑制など様々な引き締め策で「偏熱」から「穏定」にもどった。不動産価格を抑制するためにマクロ景気全体をいつまでも抑制し続けるという選択肢がないのは、中国も西側諸国と同じである。中国の7~9月の実質成長率は前年比+9.6%であるが、先進国同様に季節調整を掛けて見ると前期比+6%前後しかない。中国の景気調整は進んでしまい、5カ年計画の+7.5%を満たせなくなり、中国は遠からず景気加速に切り替える必要が出てくる。

 

製造業を中心に景気の急速に頭打ち感が出てきた理由は、欧米の低成長、円高、政府・日銀の無策などではなく以上の理由である。アジアの景気がストレートに復調すればこれらの理由はかき消されてしまう。

日本の国内景気のリズムは2011年悪い年ではない。景気の遅行(遅れて回復に入る)成分であるサービスや設備投資がようやく離陸を始めたからだ。第3次産業は鍋底を抜け出す形で上昇をみせ、設備投資にも火がついてきた。低迷する貿易動向と安定した内需という構造を考えると、2011年の帰趨を占うのは中国の政策動向であるが、予想通り戻れば2011年は景気再加速の年となる。引締め策に敏感に反応してきた上海株価が上昇トレンドに転じ、変化を示唆している。

 

他の先進国も含む世界的な「金融緩和好景気」を確認するマネーサプライ分析をみても、マネーの伸び率が回復を始めた。それは、いずれ景気を後押しする。

国内報道では暗い話が多いが、世界を見渡せば事態は好転しつつあり、波に乗り遅れないような配慮も必要だ。

 

<東洋経済>

政策の振れで踊り場に・脱却は海外の景気頼み

政府の政策が景気の振幅を拡大

外需頼みのリスク、政府の舵取りに不安

政府が発表した11月の月例経済報告は「景気はこのところ足踏み状態となっている。また、失業率が高水準にあるなど厳しい状況にある」としている。日本企業の在庫圧縮、リストラが進展する中でGDPはプラスに転じてきたが、雇用に圧力がかかり、10年10月も失業率は5.1%と高止まりをしている。

世界経済は10年半ばに早くも転換点に差しかかった。ギリシャの財政危機が火を吹き、ソブリンリスクに株・債券・為替市場が揺さぶられた。また、米国の経済指標が悪化し二番底リスクがささやかれ始めた。欧州は財政出動から緊縮財政へと舵を切り、米国は金融緩和を追加して乗り切ろうとしている。

一方、牽引車となった中国やインド、ブラジルなど新興国は海外からの資金流入もあってインフレリスク、バブルリスクが高まり、金融引き締めに転換し、景気は減速している。

 

日本も夏場から海外経済の減速と円高圧力により、足元での輸出は鈍化。内需も家電エコポイントの縮小、エコカー補助の打切りにより、政策効果の反動減が出ている。エコポイント制度、エコカー補助金による消費は先食いでしかなく、政府が景気の不要な振幅を作りだした。輸出減速と内需息切れで鉱工業生産指数は10月前月比マイナスで5ヶ月連続のマイナスとなった。設備投資は足下で緩やかに回復し、機械受注も上向いているが、上期の予定が下期に先送りされている。足元の落込みを背景に再び鈍化し、弱いままとなる懸念もある。

 

新興国の高成長維持と米国の大規模な金融緩和により、世界経済は二番底リスクを回避する見通しが出て、2011年の日本経済は輸出主導で踊り場を脱すると見られている。しかし、外需頼みのため、引き続き海外のリスクに注視する必要がある。欧州のソブリンリスクがポルトガルやスペインに波及しないか。現在の欧州金融安定化基金7500億ユーロではポルトガルまではカバーできるがスペインは難しく、基金拡大が必要とされる。2011年6月までに国債を6000億ドル追加購入する米国の量的緩和の効果も不透明だ。思惑から投機資金が新興国市場へ流れ込みバブルや資源価格高騰という副作用をもたらすリスクも依然ある。

日本は長引く経済的な停滞でデフレから脱却できていない。失われた10年が、20年になり、さらに長期的に続くのではないかという憂鬱が日本を覆っている。特に、賃下げ・リストラと雇用状況は悪く、若者の雇用が犠牲にされている。値下げ、賃下げのわなが日本のデフレを促進し、政府・民主党の雇用の柔軟性を奪う政策が状況を悪化させる。

消費税議論を封印して財政再建へのメドも立たないまま、財源なきバラマキを続けても、景気浮揚効果はなく、かえって消費マインドを凍らせるだけだ。生産労働人口減少と高齢化による需要構造の変化に対応した産業構造の高度化や、税体系の見直し、持続可能な社会保障制度への立て直しなど抜本的な改革に着手しないまま、カンフル剤を打ち続けることは、もはやマイナス効果しか生まない。

 

<ダイヤモンド・・・枩村秀樹(日本総合研究所主任研究員)>

政策効果の剝で内需振るわず輸出も減少、0.3%成長で失速

効果は小さい経済対策

日本経済は2011年に減速感を強めていく。主因は政策効果の剥落である。すでに自動車は10年9月の買い換え補助の終了により販売台数が大幅に減少している。雇用、所得環境の先行き不透明感が強く、当面、自動車販売は2桁減が続くと予想される。さらに、需要の先食いであるテレビの反動減も表れ、地デジ切り替え後には深刻な反動減が表れる可能性が高い。

2010年7月~9月期の耐久消費財販売額は過去のトレンドを年換算で10兆円も上回っている。これが、自動車、テレビなど「政策効果」による押上分と考えられる。この10兆円が剥落すると、これだけで実質GDPを2%ほど押し下げる。

外需や内需にこのマイナス影響を打消すだけの力があるだろうか。

 

外需はすでに頭打ち状態となっている。今後のしばらくは弱い動きが続く可能性が高い。欧米向け輸出は、家計・企業部門にバランスシート調整圧力が残り、財政削減も進められるため伸びが鈍化してくるだろう。アジア向け輸出も、中国などでの景気対策効果の一巡、東アジア諸国でのITセクターでの生産調整を背景に回復感の乏しい状態が続く。加えて、円高による価格競争力の低下も日本の純輸出を減少させる。

内需も景気を牽引する程の力強さは期待できない。3.5%ものGDPギャップが残っているため、企業の設備・雇用環境がなかなか払しょくされないことが根本的要因だ。企業が人件費抑制のスタンスを続けているなか、雇用者数や現金給与総額の回復ペースも緩慢である。

 

2010年9月以降に打ち出された政府の経済対策は規模が小さいなど、景気に対してそれほど大きな効果は期待できない。

以上を総合すると、2011年の日本経済は再び厳しさが強まると考えざるを得ない。輸出の増勢が鈍化し、設備投資と所得環境の回復が遅れるなか、これまで景気を牽引してきた耐久消費財が大幅減少に転じるため、実質GDPは0.3%とゼロ近くに落ち込み、景気は失速すると予想する。2011年は政策効果という化粧が剥落し、わが国経済の脆弱さが浮き彫りになる年と位置付けられる。

 

<ダイヤモンド・・・斉藤太郎(ニッセイ基礎研究所経済調査部門主任研究員)>

足踏み状態を年初には脱却、消費が下支えし1.4%成長

雇用・所得が順調に回復

2011年の日本経済を見通す上では、2010年夏場以降の足踏み状態を脱するタイミングを見極めることが重要になる。2011年初め頃には足踏みを脱却し、景気は回復に向かうと予想する。足踏みの主因は、海外経済の減速、円高の進展とした輸出の低迷であるが、輸出の環境は徐々に改善に向かっている。米国経済は2010年春頃からもたつきが続いてきたが、このところ個人消費を中心に明るい兆しも見られる。雇用回復やバランスシ-ト調整などから、景気回復のペースは緩慢にとどまる可能性が高いが、経済成長率は今後徐々に高まっていく。

米国経済が持ち直すなか、新興国経済は高成長を続けていく。また、米国の長期金利が上昇し始めたことで円高にも歯止めがかかりつつある。円ドルレートは2011年中には1ドル=90円台まで円安が進むと想定している。そして、輸出は徐々に上向くだろう。

 

景気が足踏みを脱却するために国内の自動車販売が早期に持ち直すことも不可欠。約1年半という長期間の需要喚起策が大規模な需要の先食いを発生させたが、反動減の影響が最も強く表れるのは2010年10~12月期で、2011年1~3月期以降は水準的に低いが改善に向かう。

個人消費は自動車、タバコの駈込み需要と反動減によって基調が見えにくいが、2011年はエコポイント終了、地上デジタル放送への移行完了でテレビの駈込み需要と反動減が発生すると予想される。

こうした状況下では家計の所得動向から消費の基調をとらえることが重要だ。所得が着実に増えていけば、家計は自動車以外の支出を増やすはずである。その意味で、2009年以降、雇用・所得環境が比較的順調に回復している点は心強い材料といえる。

 

個人消費が景気の牽引役となることは難しいが2011年の景気を下支えすることは期待できる。

2011年のGDP成長率は1.4%と予想する。2010年に続き潜在成長率を上回る成長が続くことになるが、2008~9年の2年間でGDPは7%以上落ち込んでおり、手放しで喜べるものではない。

 

(C)米国経済

<日経ビジネス・・・水野博泰(日経ビジネスNY支局)>

2012年本格回復へ「我慢」の年

量的緩和で二番底、デフレを退治

大企業が回復も中小企業は冴えず雇用を生まない

金融緩和頼みで二番底・デフレを回避できるか

茶会党運動がグローバル化の本質を問いただす

2011年の米国経済を表現すると「我慢」と「つなぎ」の1年になりそうだ。景気回復基調は続くが、成長を牽引する力強さには欠ける。グローバル企業が業績回復に向かう一方で、国内雇用の創出源である中小企業には元気がなく、失業率は下がらない。株式や住宅などの資産価格の戻りは鈍く、家計はいまだに負債圧縮の最中で個人消費も伸びない。底割れはないが、冴えないだらだらとした緩い成長の1年になる。

景気に対する遅行指数である失業率は9.6%と高止まりし、2011年も大幅に下がることはないだろう。米国は人口が増え続けているため、かなりのペースで雇用が増えないと労働人口の増加に追いつかないという事情もある。

 

米経済はいまだに自立的回復の軌道に乗ったとは言えず、政府や金融当局による景気対策に頼らざるを得ない。FRBは事実上のゼロ金利政策を継続し、追加的な量的緩和で景気の二番底とデフレを回避する姿勢を鮮明にし、6000億ドルの追加的な量的緩和に踏み切った。6000億ドルは2011年6月末までに供給する予定で、雇用や物価の状況によってはさらなる追加緩和も辞さない構えだが、各国は批判的で行方は流動的だ。

 

中間選挙で大企業よりの共和党が大躍進したこと、FOMCの追加量的緩和を受けて、NYダウは大幅に続伸し、リーマン・ブラザー破綻直前の終値を2年2ヶ月ぶりにうわまわった。ただし、与党民主党が大敗を喫したことで政府による追加の財政出動は政治的に極めて困難になった。

オバマ大統領は2009年1月の就任の翌月には「米国再生・再投資法」を成立させ、7870億ドルの財政出動に踏み切った。さらに、2010年9月には1800億ドルの追加景気対策を発表した。

だが、中間選挙で景気対策を含めたオバマ大統領の経済政策に「大きな政府」「税金の無駄使い」「官から民への過剰介入」だという批判を浴びた。米国民の多くが過去2年のオバマ大統領の政策運営に「ノー」を突きつけたのである。

反オバマの急先鋒に立ったのは保守派の草の根運動「茶会党・ティーパーティー」で、全米各地で自然発生的に盛り上がってきた市民運動で統一的な組織や代表、綱領などを持たない。自動車メーカーや金融機関の救済や景気対策、医療保険制度改革などオバマ政権が推進してきた政策に疑問を覚えた保守層が自ら立ち上がり、行動を起こしたものだ。

 

今の政治は何かが間違っている。普通の国民の声が聞いてもらえず、暮らしは一向に良くならない。茶会党が抱く不満や不安は右(保守)か左(リベラル)かという尺度をこえた米国民のマグマのようだ。

ITの革新が進み、国境を越えた労働市場での競争が始まってから、米国の「中間層」の暮らしは厳しさを増す一方だ。自由貿易は本当に自分達のためになるのか、保護主義のなにがいけないのか。グローバル化という大きな流れに対して、その是非を真正面から問い直すような動きが茶会党運動の中から飛び出してくるかも知れない。

 

2011年春には、2012年11月の大統領選挙に向けた長い選挙活動が始まる。2011年の米経済は明るい材料に乏しい地味な展開になりそうだが、政治面では話題に事欠かないだろう。

 

<東洋経済・・・リチャード・カッツ(東洋経済特約)>

デフレリスクは小さいが量的緩和効果には限界

FRBが日本から学んだ教訓は「デフレは退治するよりも予防する方がずっと容易」ということだ。米国が日本型デフレに堕ちる可能性は低いにも関わらず、FRBは保険をかける形で6000億ドルの追加金融緩和策(QE2)を打ち出した。ウォールストリート・ジャーナル紙による50人のエコノミストへのアンケートでは、2011年に消費者物価指数(CPI)が下落すると予測するエコノミストは一人もいない。

それでも多くのエコノミストがデフレの危険を否定してはいない。

 

米国経済が予測通りの動きを見せれば、低水準のインフレ率となっても、デフレに陥ることはないはずだ。ただし、FRBは予測よりも厳しい結果となる可能性を排除できない。すくなくとも今後2~3年間は、需要が潜在的供給を大きく下回るだろう。需要が供給を下回ると物価が低下する。OECD(経済協力開発機構)は米国の需給ギャップを09年△5%から10年△3.2%、11年には△1.7%に縮まると予想している。OECDの予測が正しければ、インフレ率は懸念すべき水準まで低下し、景気が二番底に陥るようなショックがあれば、緩やかなデフレへと移行しかねない状況だ。

 

デフレが引き起こす主な障害はFRBがマイナスの実質金利を活用して需要を喚起できなることだ。今、企業が投資を拡大し、消費者が高額の買い物をする妨げになっているのは、金利が高すぎるからではではない。企業の売上が見込めず、消費者が失業を恐れているからだ。米国に必要なのは、雇用を拡大し、売上を増加させる財政刺激策である。ところが今の米国政府は、大きな効果を生むのに十分な額の財政刺激策を打つことが非常に厳しくなっている。

QE2がマネーサプライを増大させないのならば、行き過ぎたインフレは発生しないだろう。憂慮すべきは、通常のリセッション時ほどには、QE2に実態経済の需要を増大させる効果がないことだ。だからこそFRBはオバマ大統領と議会共和党との間での減税延長法案の合意成立に安堵している

 

<ダイヤモンド・・・小野亨(みずほ総合研究所市場調査部主席研究員)>

景気対策効果切れ2%弱成長に、追加量的緩和に踏み切る公算も

高まるデフレリスク

2010年の米国経済は、景気対策効果と在庫循環の好転、新興国を中心とした世界経済の回復に支えられ、金融危機後に2%を割り込んだ潜在成長率を上回る伸びで拡大した。しかし、2011年にはこれらの要因は反動または減速へと転じる公算だ。米国の実質成長率は2%弱に留まり、2010年に比べて1ptsほど低下すると予想される。企業は新規雇用に対して慎重で、失業率は高止まりするだろう。2011年上期は在庫積み上げテンポが緩み、生産活動も鈍化すると見られ、米国経済は一時的に踊り場的様相を呈すると予想される。ブッシュ減税の完全実施を織り込んでいるが、さらに追加の減税や失業給付再延長などが実現すれば2011年上期は大きく上ぶれすることになる。

 

しかし、追加景気対策が実現しても住宅バブルの傷は癒えない。ストック調整圧力が残存し、住宅価格の下落リスクがくすぶる。住宅価格が下落すれば債務不履行が加速、消費にも逆資産効果となって影響を及ぼす。物価面ではデフレリスクがたかまる。追加景気対策が講じられても失業率の改善は限定的なものに留まり、大幅なデフレギャップが残る。2011年半ばまでにはコアインフレ率がゼロ近くに低下する。足元では、FRBが打ち出した追加緩和策(QE2)を受けてインフレ期待がやや高めで推移し、デフレ回避に寄与すると見込まれるが、先行きは不透明だ。

 

今後の追加的金融緩和にとって障害になるのではと考えられるのが、インフレ懸念を抱くタカ派の存在と、諸外国からの「通貨安競争」批判の再燃だ。中間選挙の結果、共和党が下院多数党に転じた新議会とオバマ政権との関係も懸念材料だ。民主党側では穏健派議員が敗北し、共和党側ではティーパーティ運動が盛り上がったことで、イデオロギー上の相違が際立つようになった。2012年のの大統領選挙を見据え、オバマ政権と議会が妥協と強調を重視して行けるかどうかがポイントとなるだろう。

 

(D)欧州経済

<日経ビジネス・・・大竹剛(ロンドン支局)>

鈍化する回復スピード

域内不均衡の解決は先送り

「出口戦略」の実践は経済の自立的回復が条件

ユーロ圏内の域内不均衡は改善されていない

2010年と比べて回復力は鈍化する

欧州発の経済ニュースがこれほど世界を揺るがしたことはなかっただろう。ギリシャの財政危機が2009年秋に発覚して以降、金融市場は欧州各国のソブリンリスクに翻弄され続けた。ソブリンリスクへの懸念は、ギリシャが金融市場からの信認を失っただけにとどまらず、「PIIGS」と呼ばれる周辺国に飛び火した。2010年6月にはハンガリー政府(ユーロ加盟国ではないが)高官の「政府はデフォルト状態に近い」といった財政危機をほのめかす発言が飛び出し、ハンガリー不安はユーロ相場に飛び火した。ユーロはギリシャ危機から下落を続けてきたが、6月7日に対ドルで4年ぶりの安値1ユーロ=1.19ドルとなり年初から17%下落し、対円では1ユーロ=108.97円という8年半ぶりの安値となった。

 

欧州当局は信用収縮、実態経済の転落を避けるため大規模な対策を準備した。

EUは欧州金融安定化メカニズムとして、IMFの拠出を含め総額7500億ユーロの対策を打ち出し、欧州中央銀行(ECB)も国債買い取り政策などを発表した。欧州銀行主要91行のストレステストの結果を発表し、欧州のソブリンリスクや金融機関の健全性に対する懸念は落ち着きを取り戻したが、アイルランド問題で信用不安が再燃するなど依然として危機が去ったわけではない。

 

米国で始まった金融危機は欧州に波及し、欧州各国は公的資金を銀行に注入して金融市場の安定化を図った。バブルに踊った企業も家計もバランスシート調整を進めてきた。その一方で、政府は金融危機対策に加えて、景気対策として巨額の財政出動を実施したことで、財政問題が顕在化した。つまり、民間部門で蓄積された借金を、政府が肩代わりしただけで、危機を招いた根本的な問題は解消されていない。

ユーロ圏における金融危機はドイツとPIIGSを代表とする周辺国との経常収支の格差である。単一市場原則の下で、ドイツが周辺国へ資本輸出を拡大する一方、周辺国では経常赤字が拡大し、民間部門は債務を蓄積して行った。ユーロ圏内の不均衡を改善することが必要だ。

周辺国が輸出主導型に転換するか、ドイツが内需主導型に転換し周辺国からの輸入を増やす必要があるが、生産性改善の努力を怠ってきた周辺国が競争力を高めることは不可能に近く、ドイツも内需主導型に転換するという意図は見られない。ユーロ安の恩恵でドイツが輸出を増やし景気を回復させれば周辺国への波及効果を期待できるとの声が大勢を占める。

 

欧州経済回復はドイツでも2010年後半に入ると減速感が見え始めた。2011年のユーロ圏の失業率は2010年から横ばいの10%でスペインでは20%弱と高止まりする。スペインでは不動産バブルの反動によるバランスシート調整が継続し消費の足を引っ張りそうだ。英国の不動産価格も回復の勢いが鈍化するなど先行きの不透明感が強まっている。

懸念されのが、各国が打ち出している財政緊縮策の影響だ。金融機関支援や景気対策で悪化した財政状況を改善するために、ギリシャやスペインだけでなくドイツや英国でも2011年から緊縮財政が本格化する。特に注意が必要なのが、ユーロ圏の景気回復の牽引役であるドイツの動向だ。ドイツは2011~14年にかけて800億ユーロの財政緊縮案を実施する。国ごとに差はあるが0.5%~1%程度のGDP押し下げ効果があるかもしれない。

 

域内不均衡というユーロ圏が抱える根本的な問題は解決されていない。ドイツが回復する反面、ギリシャやスペインなどの周辺国で緊縮財政により景気が冷え込めば、不均衡の改善どころか二極化が進み、さらに問題を複雑にする可能性もある。

2011年を展望した時、むしろ2010年と比べて回復力は鈍化する方向に向かわざるを得ないだろう。

 

<東洋経済・・・田中理(第一生命経済研究所主任エコノミスト)>

次の標的はポルトガル、スペインが防波堤に

財政赤字削減の遅れが目立つポルトガル

ギリシャ債務再編の議論も本格化

ギリシャに次いでアイルランドの救済が決まった後も、金融市場では危機の連鎖が意識されやすい状況が続いている。不安再燃のきっかけを作った債務再編時の民間投資家のコスト負担(ドイツ政府案)について、導入を見送りケース・バイ・ケースで判断することした。ECB(欧州中央銀行)は銀行への資金繰り支援の継続を約束し、国債への無差別な売り圧力はひとまず和らいでいるが、このまま財政不安が沈静化に向かうと考えるのは早計である。

 

市場が次に狙うのはポルトガルだ。11月末のCDSスプレッドは、ギリシャなどが支援要請を決断した水域に突入した。このまま市場の緊張が続けば、支援要請は時間の問題と見られる。

ポルトガルの財政悪化の原因は慢性的な低成長と競争力の低下にあって、早期の問題解決は難しい、深刻なのは、財政再建策導入後も赤字削減が進んでいない点だ。政府は付加価値税率の引上げや公務員給与の削減などで財政再建をもくろんでいるが、2011年度の計画達成も困難な状況にある。

2011年4月45億ユーロ、6月50億ユーロとGDP比3%に相当する国債償還を、1~3月の各月は35億ユーロ程度の政府短期証券の償還を控えている。国債等の借り換え難をきっかけに支援要請を決断する公算が大きい。

 

ポルトガルの次に市場が不安視するスペインでは、財政再建の取組が実を結んでいる。10月までの累積財政赤字削減額は年間計画を上回り、11年分の赤字削減を先取りしている。中核銀行の経営基盤は比較的健全で、経営難が指摘される貯蓄銀行も45行から17行への再編が完了する見通しだ。

加えて、政府は年金改革の着手を約束、たばこ税引き上げ、国有資産の売却などで赤字削減策を打ち出し、国債発行額を抑制する。域内4位の経済規模を有するスペインに危機が波及すれば、銀行危機が欧州全域に広がりかねない。スペインは危機封じ込めの防波堤として、当局もあらゆる手段で救済回避に動くことが予想される。

 

債務再建を巡る憶測が市場の動揺を誘う可能性がある。投資家関与を求める当局の方針に対して市場が強い拒否反応を示した背景には、ギリシャがいずれ債務再編に追い込まれるのではとの警戒心がある。関係当局はギリシャ支援の返済期限を当初の3年から7年半程度に延長する方向だが、問題を数年先送りしたに過ぎなく、資金計画は早晩行き詰まる可能性が高い。

債務再編による市場の混乱を恐れる欧州当局は、当面は財政不足の穴埋めを追加融資で乗り切ることが予想される。最終的に市場復帰が無理ならば、市場が落ち着いた頃を見計らって、2013年7月以降に恒久的な財政危機克服メカニズムの下で、債務再編に踏み切ればいいと考えているのだろう。

 

総額7500億ユーロの救済基金は、今回のアイルランドの救済費用などを考慮に入れると、実際の融資可能額は5600億ユーロ程度に縮小する。仮に、ポルトガルとスペインを救済し、向こう3年間の財政不足額を丸抱えする場合、必要支援額は最大6000億ユーロ超えに膨らむ可能性がある。政策当局のスペイン防衛に対する本気度を市場が試してくる際には、基金増額を検討する必要が出てこよう。

 

このように、欧州財政不安の早期の収束は困難な状況にある。2011年は、各国の財政再建への取り組みとユーロ防衛に対する当局の決意が試されることになるだろう。

 

<ダイヤモンド・・・田中理(第一生命経済研究所主任エコノミスト)>

早期の財政危機解消は困難、中核国と周辺国で景気二極化

めったにないことだが、東洋経済と同一人物が書いているので、ダイヤモンドは割愛する。

 

(E)中国経済

<日経ビジネス・・・坂田亮太郎(北京支局)、熊野信一郎(香港支局)>

先進国の低迷よそに成長競い合う中国・インド

インフレの抑制と為替の動向がカギ

中国は2011年も政府目標の8%以上の成長達成へ

次期国家主席が内定し経済政策の行方が注目される

日本を尻目に中国の経済は「過熱ぶり」が心配されるほど好調だ。2010年通期で二桁の成長を達成するのはほぼ確実な情勢といえる。好調な理由は金融危機発生から低迷していた外需が復調してきたことが大きい。輸出型産業の勢いが戻り、2010年9月の工業生産は前年比13.3%増と大きく伸びた。自動車や電化製品などの主要産業で在庫調整が一巡したことも回復を後押しした。2011年も政府が理想としている8%以上の経済成長を達成する可能性は高い。

 

最大の課題は好景気の代償として誘発される物価の上昇だ。古来、中国政府の最も重要な政策はインフレの抑制だった。物価が上がり満足に食べられなくなると、抑えてきた民衆の不満が爆発しかねない。政府が年間の抑制目標としている前年比3%のラインが目安となる。この危険水域を超えると社会の不安定度が一気に高まり、各地でデモが頻発する。そして、不満の矛先はしばしば日本に向けられる。2010年に入りCPIは上昇し、3%のラインを9月までに4度超えており、2011年にかけてさらに上昇する可能性がある。

 

今回物価上昇をもたらしているものは農産物の値上がりだ。中でも穀物は前年比10%台、野菜類は20%台の上昇が続いている。直接の原因は異常気象であるが、構造的要因は格差是正を進める胡政権の政策にある。農村部の収入格差解消のため、農作物の最低買付価格を上げてきたが、農村部の収入が上がることは同時に都市部で痛みをもたらす。食品価格が値上がりし、人口の半分を超えた都市住民の生活を直撃した。

 

中国政府は今後、高い経済成長の陰で直視せずに済んできた課題、都市部と農村部の収入格差、不動産バブルや少子高齢化など、到るところに潜んでいる解決すべき社会の歪みと本格的に向き合っていかなければならなくなる。

次期国家主席に内定した習近平氏の経済手腕が注目される。「和諧社会」を標榜して格差の是正に力点を置く胡政権の考えを踏襲するのか。それとも習氏を後押ししているとされる江沢民前主席のように、多少の格差は容認しても成長重視で突き進むのか。2011年から始まる第12次5カ年計画(2011~15年)の中で習氏の考えが明らかになってくる。

 

インドは景気過熱感が強まる中で2011年を迎える。世界銀行の予測では2011年度のインドの成長率は8.6%、一方、中国は8.5%と予測している。金融機関やシンクタンクによる2011年インドの成長率は8%半ばから9%の間が大半を占め、同じく8%台を見込まれる中国と肩を並べるか、場合によっては「中印逆転」も現実味を帯びてきた。

 

<東洋経済>

人民元に柔軟性欠く、金融政策の難しさ

インフレ対策最優先でも人民元の大幅高は回避

2割超に返済リスク、第3セクター問題

2010年は中国経済が目覚ましい回復を遂げた1年だった。だが、力強く見える中国の景気回復は、実態との際どいバランスの上にかろうじて成立しており、「経済政策は11年には困難さと複雑さの両面に直面する」と見られる。

最も大きな政策課題に浮上したのがインフレだ。中国共産党は中央経済工作会議で、2011年の経済運営方針を決定。財政出動は10年に引き続き積極的な方針を維持する一方、金融政策は10年の「適度に緩和的」から「穏健」に引き締める政策姿勢を共有し、インフレ対策を「突出した位置付け」とした。

 

所得格差が大きく、年金・医療保険などのセーフティネットの整備が進んでいない中国においては、物価高騰は社会不満や政治不信にもつながりかねない。特に食品価格は低所得者層への負担が大きく、所得格差縮小の妨げになるからだ。

インフレの要因には、国内の消費拡大や自然災害、外需増を背景にした需給逼迫以外に「国内の過剰流動性を受けた投機行為が物価情勢を厳しくしている」として、政策によって是正する必要があるというのが中国政府の認識だ。具体的な政策目標としては、マネーサプライ増加率が10年の17%から16%程度に、人民元の新規貸出増加額も同様に7.5兆元から6~7兆元へと小幅に調整されるというのが現地金融関係者の見方だ。こうしたなか、「2011年のCPI上昇率は5%程度に達する」と厳しい見方をするエコノミストは少なくない。

 

そもそも人民元の変動を小幅に抑えたままでは、金利政策の効果は出にくい。インフレ抑制の難しさに、中国の経済政策の舵取りの複雑さが端的に表れている。中国が為替介入を弱め元高を容認すれば、国内の流動性資金が減る。さらに対外貿易上でも購買力が増し、輸入品の調達に有利に働くことから、元高進行はインフレ対策として効果を発揮すると期待される。しかし、中国政府は2011年も顕著な元高は容認しないと見られ、上昇幅は3%程度の見通しだ。大幅な元高は輸出産業に打撃を与えるからだ。

 

財政計画は2011年も積極路線を継続するが、部分的には調整が加えられるだろう。地方政府が設立した公共事業の実施主体「地方政府融資平台」に対する政策支援の見直しだ。融資平台は日本の第三セクターのような事業体で、高速道路やエネルギー供給事業といったインフラ関連事業の受け皿となっている。09年新規貸出増加額9.6兆円の約4割が融資平台に流れたとされている。だが、事業計画の甘さや調達資金を不動産投機に投入するなどの杜撰な経営、さらに融資を行った地方金融機関のリスク管理能力の欠如から、金融当局は融資平台の2割超えに深刻な返済リスクがあると見ている。2011年には問題のある融資平台に対し、事業計画の制限、事業体整理などを行う方針だ。

中国の地方政府は税財源が乏しいだけに、融資平台にメスが入れば、最悪の場合地方行政の破綻も起こりかねない。その場合は新たな国家財政の投入も覚悟しなければならない。

 

<東洋経済・・・細川美穂子(みずほ総合研究所調査本部アジア調査部中国室研究員)>

個人消費・内需主導型の成長へ転換できるか

新5カ年計画では個人消費拡大を目指す

産業高度化やサービス化で日本企業にもチャンス

世界的な金融危機後に採られた「4兆元内需拡大策」の奏功で、中国の景気は急回復したが、2010年後半にかけては一服、公共投資一巡や不動産価格抑制策の影響により成長率は鈍化した。ただし、2011年以降も中西部開発投資などの政策が続き、堅調な輸出や個人消費が見込まれ、プラス9%台の高成長となろう。しかし、その中身を見ると、投資偏重の成長など「不均衡な成長」という課題を抱えている。GDPに占める総固定資本形成の比率は2009年に過去最高の45.4%となった。この水準は「投資が投資を呼ぶ」と表現された高度成長期日本のピーク時(1973年32.8%)と比較しても非常に高い。これに対し、個人消費のGDP比は1981年の52.5%をピークに2009年は35.1%まで低下した。中国にとって「個人消費を主体とする内需主導型成長への転換」は急務だ。

 

10月に策定された「第12次5ヶ年計画(十二五)策定に関する提案」では、量的拡大や高投資偏重の弊害、投資依存の規模拡大過程での不動産価格高騰などで所得格差の拡大がおき、今後は産業、地域、所得階層の間で、均衡をより重視した経済政策運営を目指す方向を打ち出した。

個人消費拡大に関する政策として「家計の所得の伸びとGDPの伸び率を等しくする」目標を採用、個人消費拡大のために必要な所得向上政策方針を明確にした。また、所得拡大だけでなく「所得税減税や社会保障費充実で可処分所得の拡大」も構想された。

中国は投資依存から脱却し、個人消費による経済成長へと成長パターンを転換し、「世界の工場から世界の市場へ」転換できるかどうか。2011年からの十二五期間中、胡・温体制から後退する習体制の政策実行力が試される。

 

「個人消費主導の成長方式転換」が実現すれば、企業の労働コスト上昇が予想される一方、家計の購買力拡大を通じた魅力的な国内消費市場の出現が期待される。1779年からの一人っ子政策で中国は2004年頃から沿海部で労働力不足が顕在化し始めている。「2017年か18年には労働力人口が減少に転じ、農民工の賃金は急騰する」と中国社会科学論壇で明言され、労働力人口減少時代を迎えることになる。

労働力人口が減少に向かう中で、生産性向上による産業の高度化は不可欠となる。「省エネ環境保護、次世代情報技術、バイオ、最先端機械設備、新エネルギー、新素材、新エネルギー自動車」の7業種を「戦略的振興産業」に指定した。これら新興産業の中には日本が優位性を持つ分野も多く、技術移転や知的財産権などの課題は残るものの、新たなビジネス機会が期待できる。

 

<ダイヤモンド・・・斉藤尚登(大和総研投資調査部シニアエコノミスト)>

後半にかけ加速し9.6%成長、人民元は対ドルで3~5%上昇

不動産投資抑制は一時的

中国政府はインフレや過剰流動性への警戒感を強め、人民銀行は2年10ヶ月ぶりに利上げし、預金準備率を11月に2回、12月にも1回引き上げ18.5%とした。12月3日の中央政治局会議では今後の金融政策を「適度な緩和」から「中立」に変更するとした。一連の金融引締め政策によって、景気が大きく減速するとの懸念もあるが、これは杞憂だ。現在の政策重点は、経済の持続的安定成長とインフレ・過剰流動性抑制の二つであるが、成長が大前提のうえの抑制策である。成長を大きく抑制するほどの金融引締めが実施される可能性は極めて低い。景気が過熱しない限り、利上げは2011年中に2~3回、0.25%を想定している。2010年は1~3月期をピークに成長率がスローダウンしたが、2011年は正反対に期を追うごとに成長が加速し、年間実質GDP成長率は9.6%程度となろう。

 

足元の工業生産の減速は、2010年の単位GDP当たりエネルギー消費量を2005年比で20%削減するための政府主導が主因である。これは、2010年末までの期間限定の措置で、年明け後は自然に緩んでくると見られる。不動産投資・投機抑制策の強化も長期化はしまい。

これらの抑制要因が徐々に無くなるだけで景気に明るい材料が増える。

さらに、2012年秋に予想される第18回党大会での党人事と2013年春の国家機構人事にそなえた「政積」向上のため、2011年後半以降は特に地方で景気拡張的な政策が採られやすくなる。一人当たりGDPと伸び率、都市と農村の収入と伸び率、都市部の就業、一人当たりの財政収入と伸び率は評価項目として、景気がよければ得点が上がるからだ。

 

人民元レートは年率35%程度の元高ドル安を想定。それ以上の元高加速は、輸入物価高進への対応など中国国内からの強い要請がある場合に限られるとみる。

2011年にスタートする第12次5ヶ年計画の最重点は「消費拡大」である。消費拡大は、単なる所得増加策にとどまらず、格差縮小策によって推進されるであろう。消費環境の改善は耐久消費財などモノへの消費をさらに刺激し、サービス消費への需要を増大させる。

消費増加による恩恵が大きい産業群として、農業、食品のほか、卸・小売、旅行、不動産、銀行・保険などのサービス業も挙げられる。

 

(F)為替相場

<日経ビジネス・・・上野泰也(みずほ証券チーフマーケットエコノミスト)>

「入院治療中」の米国経済が最大の焦点・流動的な要素も数多い

追加緩和策後の米国経済の動向

米国株の動向

ユーロ圏の信用不安問題と財政緊縮

2011年の為替相場動向に影響を及ぼす要因として上記3点が挙げられる。

最も影響力が大きいのは、米国経済の動向であろう。住宅バブル崩壊、クレジットバブル崩壊によって、家計や金融機関がバランスシート調整を余儀なくされ「入院治療中」の状態である。2010年春ころから、市場では米国景気「二番底」懸念に加え、「日本型デフレ」も取り沙汰されドルが下落した。FOMC(米連邦公開市場委員会)はQE2(量的緩和第2弾)と呼ばれる追加緩和策を打ち出したが、その効果及び副作用についてはしばらく見極めが必要な状況だ。いずれにせよ、大きなバブルが崩壊した後のバランスシート調整には時間がかかる。米国経済の本格回復は2012年以降の話だろう。

ただし、雇用統計で強い数字が続いたり、物価指漂が前年比プラス幅を拡大し始めたりする場合は、2011年中でもドル買いの動きが強まるであろう。逆に追加緩和策効果に市場が疑念を抱いたり、大規模な国際買い入れが「国債の貨幣化」と受け取られドルの信認問題に発展すれば、ドルは下落する可能性が高くなる。

 

次に米国株の動向であるが、上昇時の資産効果による個人消費の回復を支援する役割と、投資マネーのリスクテイク度合を左右する。米国株が上昇すれば投資マネーがリスクテイク姿勢を強め、ユーロ、オーストラリアドル、新興国通貨、原油などの商品先物に買いが入り安くなる。いずれ「円キャリー取引」が再開されれば、さまざまな通貨に対して円売りの圧力が高まる。逆に米国株の下げがきつくなると投資マネーはリスク回避志向を強め、新興国などから米国への資金還流が活発になり、ドルが上昇するほか「逃避通貨」の位置付けにある円も買われやすい。

 

ギリシャ、ポルトガル、アイルランドなど周辺国の財政悪化と信用不安問題が取り沙汰される中で、ドイツやフランスなどの中核国は財政の緊縮を強化し、通貨統合への市場の信認を確保して行く方針である。強引な財政引締めは景気悪化要因であるが、ユーロ相場の下落で、ドイツなど中核国の輸出が堅調に推移すのが望ましい。2010年後半、ドル売り材料からユーロを買い戻す動きが進んだが、ユーロ高がこの先も続けばユーロ圏の景気指標は悪化が目立つようになる。

ユーロの下落局面が再度到来するだろう。

 

2011年の予想レンジは現時点で円が対ドルで80~95円、対ユーロで110~120円前後としたい。

ただし、動向については流動的要素が数多い点に留意しておきたい。

 

<東洋経済・・・佐々木融(JPモルガン・チェース銀行債権為替調査部長)>

実効レートでは円安に・円相場は対ドルで円高継続

米ドルは円よりさらに弱く、ユーロは円よりも強含み

2011年の世界経済は緩やかながらも回復基調をたどり、世界全体の実質GDP成長率は3.0%になると予想している。その中で、FRBは6000億ドルの量的緩和策を開始、日本銀行も35兆円規模の資産買い取りなどの基金を創設、ECB(欧州中央銀行)とBoE(イングランド銀行)は政策金利の低水準の維持を行う。

景気がさほど悪くない中で四つの主要中央銀行が超低金利政策を続けることは、2011年の世界の金融資本市場が過剰流動性によるサポートを得る可能性が高く、代表的なファイナンス通貨である円は、弱い通貨となるであろう。

 

2007年以降、上昇基調をたどってきた円相場は、2011年実効レートベース(円と主要通貨間の為替レートを指数化したもの)で見れば3年ぶりに下落トレンド入りし、高金利通貨やコモディティ通貨、エマージング通貨に対して比較的大きく下落することが予想される。もっとも米ドルが、弱い円よりもさらに弱い通貨となる結果、ドルの対円相場は2011年も緩やかに下落を続け、年末までに1ドル=79.75円の戦後最安値を下抜けする可能性が高いと予想する。その理由は、FRBの金融政策にある。世界最大の経常赤字国、対外純債務国である米国と、世界第2位の経常黒字国、世界最大の対外純債権国である日本との政策金利水準がほぼ同じというのは異常な事態であり、ドル円相場が安定化するには米国金利が日本金利を一定程度上回る必要がある。

 

2011年中にFRBの利上げを予想していない(利上げは2012年4~6月を予想)ので、米ドルは弱い円よりも弱くなると見る。

ユーロは欧州周辺国の財政問題などから2010年は主要通貨で最も弱い通貨となった。2011年も問題が広がり、スペインやイタリアなどの債権が売られ、ドイツ債券利回りとのスプレッドが拡大すれば、ユーロが最弱通貨になるリスクはある。しかし、EUとIMFによるサポートスキームができている中で、金融資本市場には過剰流動性が供給されることを考えれば、少なくとも2011年は情勢がある程度安定し、円や米ドルよりはユーロの方が強くなることが予想される。

2011年レンジ予想は1ドル=75~84円、1ユーロ=107~117円。

 

<ダイヤモンド・・・高島修(シティバンク銀行チーフFXストラテジスト)>

2011年春にかけて1ドル=90円も、そこからのドルの反発は期待薄

米利上げ初期にはドル下落

2010年10月にドル円相場は80円台まで下落した。ドル円は過去3年間下落トレンドをたどっている。だが、ドルの名目実効相場は2002年以降続いた長期ドル安トレンドが下げ止まろうとしている。2006年に始まった米経常赤字の縮小が次第にドル安圧力を後退させ始めた可能性がうかがえる。

新興国などで巨額のドル建て融資を行っている欧州系金融機関はギリシャ、アイルランド問題に揺れ、信用不安の高まりでドル資金の調達に苦慮するというドル不足問題が表面化した。自国通貨を売ってドル資金を確保する動きが欧州通貨の下げを加速させ、2011年もユーロは上値の重い展開を続ける。

 

米国経済にはいぜん不透明感がくすぶっている。FRBも歴史的な低金利政策・金融緩和を継続中だ。だが、米国では企業収益が急回復し、金融機関の不良債権処理も急速に進展し、二番底に陥る懸念は少ない。実際、米国株はリーマンショック後の戻り高値を更新し、FRBが量的緩和を決定した11月以降は思惑とは裏腹に市場金利も上昇に転じた。米デフレ懸念が修正される過程で市場金利の上昇とそれに下支えられたドル反発が続くだろう。2011年春にかけて最大90円程度までのドル反発の可能性がある。

 

注意すべきは過去にドル円相場がFRBの利上げ初期に下落する傾向が見られ、平均すると半年強のタイムラグがあることだ。金利上昇懸念の大きい利上げ初期には対米投資が手控えられ、ドル安圧力が高まる。日本では従来外貨投資の大半を機関投資家が担って、リスク管理のために慎重な外貨投資を求められ、なおさらその傾向が強かった。昨今は外貨投資の主な担い手が金利感応度やリスク許容度の高い個人に変化している。米利上げとなれば、比較的素直にドル高に動くと思われるが、2011年中に90円を超えるようなドル高円安を期待するのは時期尚早だろう。

 

(G)業種別

百貨店

<日経ビジネス・・・小平和良(本誌)>

SC化か、百貨店らしさか

売上回復が見えない中、2極化が鮮明に

効率運営か、百貨店らしさかで戦略が分かれる

大阪は「2011年問題」で大激戦に

日本一の好立地である三越銀座店が1.5倍に増床した。三越銀座店は行政とも協力し本館と新館の間にあった道路の真上にも売場を作った。今回の増床が注目を集めているのは、数少ない行政と一体になった再開発の手法だけでなく、SC化する一部の百貨店に対抗して三越伊勢丹が目指す「百貨店らしさ」を具現化した店舗と捉えられているからだ。

売上の減少に直面し、一部の百貨店は従来の百貨店モデルの見直しを進め、その代表例がJ・フロントリテーリングである。効率化した百貨店経営を模索し、従業員が複数の業務をこなすように改め、売場を取引形態に応じて分類するなどを規定してきた。今、J・フロントが目指しているのが売場のテナント化である。ファッションビルやSCのように個々の売場の運営を取引先側に委ねる手法を取り入れた「うふふガール」を大丸心斎橋店に導入し、松坂屋銀座店にはフォーエバー21、中国蘇寧電器傘下のラオックスを導入した。内外の消費者の欲っするものをそろえる思惑がSC化となる。

 

一方、三越銀座店は品揃えを取引先まかせにせず、百貨店のバイヤーが売場を作る「自社編集売場」を設けた。三越銀座店はJ・フロントの対極に位置し、自主編集売場を増やし、価格より質にこだわった。近隣の西武有楽町店は2010年末で閉鎖し、JR東日本のルミネが入ることになった。

2011年は大阪市内で百貨店の増床や新規開業が相次ぐ。難波では高島屋が増床、大阪駅周辺はJR大阪三越伊勢丹が新規開業、大丸梅田店が増床、翌年は阪急梅田本店の建て替え終了と大激戦になる。

 

SC化か、百貨店堅持か、それとも新興勢力にとって代わられるのか。東西の大商業地での戦いが、百貨店の未来図を映し出すことになりそうだ。

 

<ダイヤモンド・・・須賀彩子(本誌)>

大阪2011年問題勃発で、三越伊勢丹、大丸、阪急が三つ巴

2010年10月、2年8ヶ月ぶりに全国百貨店の売上高が前年を上回った。ところが、息をつく間もなく2011年は出店・増床ラッシュで過当競争に突入する。

舞台の一つ大阪では、既に2009年大丸がそごう心斎橋本店を買収、2010年には難波高島屋が増床するなどの動きがあった。しかし、2011年こそがデットヒート本命年だと見て間違いない。

2011年春、梅田にJR大阪三越伊勢丹が新たに出店、同時に大丸梅田店が増床オープンすることで、同エリアの百貨店売場面積が一気に1.6倍に膨れ上がる。注目されるのは阪急だ。梅田では稼ぎ頭の阪急梅田本店が建て替え工事で戦力半減とういうなか、ライバル2社の出店と増床の挟み撃ちに遭い苦戦を強いられそうだ。

その一方で、同じ時期の3月にJR博多駅に博多阪急を出店させる。博多には大丸、三越、岩田屋が店を構えており、これらに挑戦していく立場となる。偶然にも、梅田と博多の両地域で阪急阪神百貨店、三越伊勢丹百貨店、大丸の三つ巴の戦いとなる。

「迎え撃つ側の既存の百貨店売上は2010年をさらに割り込む」ことが想定され、新店オープンという話題で盛り上がるが、過当競争に巻き込まれる当事者は業績的にきつい1年となる。

 

スーパー

<日経ビジネス・・・小平和良(本誌)>

低価格競争は限界に、大手は小型スーパーに活路

海外進出とともに、国内大都市が主戦場

コンビニ並みの小型店で利便性を競う

商社・食品卸を軸に、再編の可能性も

イオンは2000年代に入ってから郊外型のSCを全国に作り成長を遂げてきた。しかし、2007年の「改正まちづくり3法」により大型店出店が規制され、大型SCを次々と出店する戦略は変更を余儀なくされた。さらに、消費低迷と専門店の台頭でSCの核テナントとして入るGMSの売行きが悪くなり、業績悪化を招いた。

イオン以外の大手スーパーにとっても他人事ではない。国内の消費市場は長く低迷し、低価格競争が収まる気配はない。安売り競争も既に限界に近付いている。安売りではコスト競争力で優れるディスカウントストアの攻勢を受けるほか、米ウォルマート傘下の西友など海外の流通大手もライバルとして存在感を増している。品揃えではその土地の消費者の好みを知りつくした地元スーパーに利がある。幅広い地域で展開する大手スーパーは中途半端な存在となりつつある。

 

成長の手段としてはアジアへの出店もある。イオンは中期経営計画の中で、日本本社、中国本社、アセアン本社の3本社体制に移行し、アジア市場を重点とする戦略を打ち出した。そのほか、イズミヤ、ユニーも中国進出を計画するが、アジアでの出店がすぐに大きな収益に結び付く保証はない。

 

イオンも含めて郊外型から国内大都市部の市場へと方向転換を行う。

イオンはコンビニとほぼ同じかわずかに大きい小型スーパー「まいばすけっと」の展開を加速し、セブン&アイは「イトーヨーカドー食品館阿佐ヶ谷店」を2010年10月にオープン、マルエツも小型店「マルエツプチ」を増やしている。各社が都心部で小型店出店を進めているのは社会構造の変化を受けてのものだ。人口減が進み、国内の成長市場は首都圏を中心とする大都市部に限られる。さらに、高齢化と共働き世帯の増加で、大型スーパーに車で買いに行くという消費行動が変化してきている。新しい消費者を取り込もうと、各社は実際の店舗だけでなく、ネットスーパーなどでもしのぎを削る。

 

これらの変化に対応しているのはスーパーだけでない。コンビニやドラックなど他の流通業も変化しつつある市場を狙っている。大都市部での流通各社の消費者争奪戦は一層激しいものになるだろう。

一方、地方では人口減などに直面し、スーパーは体力勝負を強いられている。今後は総合商社と食品卸を軸とした再編の動きも広がる可能性がある。国内事業の効率化と海外展開を考えると商社や食品卸の力が不可欠になってくるからだ。

さらに、以前から国内での事業買収の可能性を公言しているウォルマートなど、海外勢も消費者の支持を集めてきており、M&Aで日本の事業拡大を考えても不思議ではない。

 

<東洋経済>

都心シニアを取り込む、超小型スーパーの大量出店

都心にも「買い物難民」、スーパーの物流を活用

小売業化にとって、国内でほぼ唯一残った成長余地といえるのが首都圏都心部である。都区内や近郊でコンビニと間違えるような超小型の食品スーパーが店舗数を拡大している。

イオンの小型スーパー「まいばすけっと」は東京西部や神奈川県で150店舗超えに拡大し、2014年2月期までに500店を目指している。PBのトップバリュ、野菜、肉、魚、惣菜などを中心に標準的なコンビニより少ない2000アイテムに絞り込む。公共料金支払い代行などの業務は行わず、新聞や雑誌も店頭におかず若い男性がたむろするのを避けて、近隣の主婦やシニアを取り込む。近隣で展開するイオン食品スーパーの物流網を活用し運営コストを下げる。営業時間も7時から23か24時までにし、経費効率化をはかっている。

マルエツが都内で展開する「マルエツプチ」は40~150坪と広さにバラツキがあるが、スーパーのマルエツより狭い。都心部在住者やオフィス勤務者が主なターゲットで取扱アイテムは3300~6500と「まいばすけっと」より多く、食品以外に日用雑貨、化粧品など幅広く置く。

 

商店街の衰退で地場スーパーなどの撤退が相次ぐ一方、近年の都心回帰でマンションでのシニア層の1~2人暮らしも増えてきた。都心部でも「買い物難民」に近い消費者がいる。

コンビニ各社も30~40代男性に偏る客層を主婦やシニア層に広げるべく、惣菜や生鮮の扱いを強化している。生鮮品を扱う100円コンビニ「ローソンストア100」は800店をこえた。

 

3社の想定顧客や戦略は異なる面も多いが、狭い商圏でシニアや主婦層をターゲットに据える点、既存スーパーやコンビニの物流網を活用することで運営効率化を図っている点など共通項も多い。何より、消費者から見て、スーパーの営業時間外でも生鮮食品が買える至近の小型店という点で、利便性にイメージは一致している。

コンビニと似て非なる超小型スーパーの定着度合いが注目される。

 

<ダイヤモンド・・・須賀彩子(本誌)>

商社が再編のカギをにぎる

百貨店に劣らず、スーパー業界も先行きは厳しい。2011年2月期の営業利益はイオンの総合スーパー事業は3~400億円と想定されるが、イトーヨーカ堂は50億円、ダイエー単体は20億円と損益ギリギリの見通しを公表するありさまだ。人口減でマーケットが縮小するなか、地方スーパーはさらに厳しく、売上500億円以下の規模では生き残りが難しいといわれている。

業界再編にはイオン、米ウォルマートが共にM&Aに積極姿勢を見せているが、目立った動きは見せていない。自社の業績を立て直すこと、資金面の余裕がないこと、ローカル企業側の抵抗意識が強いことが、その理由だ。

カギをにぎるのが商社だ。2010年8月にマルナカ(四国)がイオンと業務提携を結んだが、注目すべきはここに三菱商事が加わったことだ。イオンと単独の提携を警戒したマルナカ側が三菱商事の参加を要請したといわれる。

2011年に業界再編の流れが一気に加速するかどうかは、商社の姿勢や動向次第となりそうだ。

 

コンビニ

<日経ビジネス・・・飯山辰之介(本誌)>

特需頼みの成長に限界、新業態の開発が衰退防ぐカギに

ドラックストアとの提携が拡大

高齢者や女性の需要取り込みが急務

業界の垣根を越えた競争が激化する

「ドラックコンビニ」や「生鮮コンビニ」など2010年はコンビニ各社が相次いで新業態の店舗展開に乗り出した。顕著なのがローソンで弁当や総菜を店内調理し提供する「ローソン神戸ほっとデリ」を神戸物産との共同出資会社で、ドラックとコンビニの融合店をマツモトキヨシなどと提携して展開する。ドラックとの提携はローソンにとどまらず、ミニストップはイオングループのドラックと組んで「れこっず」を、セブンイレブンはアインファーマシーズと組んでオーナーが薬を販売できるよう養成を始めた。

生鮮コンビニについてはローソンやファミリーマートが乗り出しているほか、セブンイレブンも野菜販売を開始した。

 

2010年は猛暑やタバコ増税で一時的な売上は伸びた。しかし、特需を除けば成長の伸びは下振れしている。苦境の要因はデフレや消費者心理の悪化だけでなく、過剰出店や少子高齢化、市場規模の縮小といった構造的な問題がある。コンビニの店舗数は4万3000店を超え、新規出店の余地は狭まり、高い売上が期待できる地域には店舗が乱立する一方で既存店の売上は低下する。

 

市場縮小に苦しむのはコンビニ業界だけではない。新規需要を取り込もうとスーパーなど他業種の「領空侵犯」が相次いでいる。イオンは小型スーパー「まいばすけっと」の出店を拡大、小さな商圏の取り込みを狙う。縮小するパイを巡って2011年の競争が激化しそうだ。市場の変化に対応できないコンビニチェーンには淘汰の圧力が強まることも予想される。

 

<ダイヤモンド・・・新井美江子(本誌)>

底力が試されるコンビニ

2011年のコンビニエンスストア業界は2010年に続いてチェーン間の業績に差が出る年となるだろう。2010年はタスポ特需の反動減が6月で一巡。猛暑やタバコの駈込み需要で7~9月は業界全体が好調だった。ただし、大手4社の業績はマチマチで、セブンイレブンの8月既存店売上は前年比2.6%増、一方、サークルKサンクスは同1.4%減におわった。同じコンビニ業態でも、商品やサービスなどのレベルの違いを消費者は感じとっている。

2011年は売上げを押し上げる外的要因は予定されていない。価値を提供できる底力があるチェーンとないチェーンで業績の差は否が応にも開いていくだろう。

チェーン転換の動きも注目だ。2010年3月、ファミリーマートはam/pmジャパンを吸収合併し、首都圏特に東京都内のシェアを高めている。2011年には加盟店の離脱転換も始まり、サークルKサンクスの地域本部企業であるサンクスアンドアソシエイツ富山(77店)が7月1日の契約満了をもってローソンにコンビニ事業を譲渡する。決断を後押ししたのはセブンイレブンの富山進出による競争激化だ。セブンイレブンは3月に鹿児島に進出を決定しているが、ここにもサークルKサンクスの地域本部企業があり、状況によっては、さらなる離脱転換の可能性は否定できない。

 

専門店

<日経ビジネス・・・飯山辰之介(本誌)>

エコポイント終了の反動が来る

海外需要の取り込みがカギ

7月のアナログ放送停止後、競争が本格化

家電量販店初の海外事業が動き出す

国内でも海外勢との競争が激化する

家電量販店各社にとって2011年は厳しい年になりそうだ。2009年から続くエコポイントが2011年3月に終了し、その後限られた需要の奪い合いが予想されるからだ。2010年は猛暑でエアコンが好調だったり、エコポイント特需で収益は上振れしている。だが、その特需も終わり、上振れした分だけ反動も大きくなると予想される。エコポイント後の成長戦略をどう描くか、その中での注目はヤマダ電機の海外出店だ。日本で磨いた家電小売ノノウハウが中国で通じるのか、海外とは縁の薄かった家電業界にとって、今後の進出を決める試金石になりそうだ。

 

家電量販店がようやく海外に目を向ける一方で、ユニクロは海外進出を加速する。2010年8月期の売上は8148億円と過去最高を更新し、そのうち727億円が海外市場である。2011年にはその規模は1000億円に達する見込みだ。だが、国内事業は厳しい。2010年下期は国内事業が減収になったほか、2011年8月期は通期で減益を予想する。主な要因は「猛暑による秋物立上がりの遅れ」「コア商品在庫の不足」にあると分析しているが、H&MやZARAといった海外ファストファッションの進出拡大も影響を及ぼしているだろう。

国内市場は縮小しているにもかかわらず、海外勢は好調で出店攻勢を極めている。対する日本勢に勢いはない。2011年は生き残りをかけた海外勢との競争が激化するかもしれない。

 

<東洋経済>

ブーム去り生存競争へ・ファストファッションの今後

商品の生産場所がない、中堅の再編の可能性も

ファストファッションに火がついたのは2008年9月にH&Mが銀座に出店した時だ。H&Mの盛況を受け、2009年にはフォーエバー21やアバクロンビー&フィッチが上陸、2010年には松坂屋銀座店にフォーエバー21が、東武百貨店池袋にZARAが入居するなど百貨店へも触手をのばした。日本勢もユニクロやポイントが百貨店に出店し、ファストファッションが日本の衣料業界を席捲した、

だがここにきて風向きが変わり始めた。2010年9月、英国のトップショップが新宿に国内最大の旗艦店を開店したが、2年前に比べ注目度合いは一変している。

「ファストファッションに、もはや集客のインパクトはない」と言われ始め、「街にファストファッションがあふれ、真新しさがなくなった」と分析されている。それでも、海外勢の出店意欲は旺盛で、トップファッションは今後年3~5店を出店、フォーエバー21も追加物件を探しているし、ZARAも新業態「ベルシェカ」を2011年3月渋谷に開店する。

 

迎え撃つ日本勢は劣勢だ。というのも、商品供給元である、「世界の工場」中国で、衣料品生産が難しくなってきているのだ。

働き口が限られていた内陸部でここ1~2年、化学系や半導体の工場が新設され、転職者が続出し縫製工場での工員不足が起きた。その後も工員不足によって生産が滞り、「商品の納期が遅れ、時期を逃して売上が減少」する事態を引き起こした。H&Mの中国生産比率が3割程度に比べ、9割超えが中国生産という日本勢にとって影響は甚大だ。欧米勢がアジア出店加速に向け、中国での生産を拡大し始めたことも追い打ちをかけ、中国工場がオーバーキャパシティになっている。多品目ながら1品当たりのロットが小さく、納期に厳しい日本企業向けは効率が悪いと、欧米勢に工場のラインを奪われ始めている。「まともな商品を造れるところがない」との嘆きも聞こえる。

 

日系企業はバングラディシュやベトナムなどへ生産を移管する動きが出ているが、ユニクロでさえ「技術面を考えれば中国に頼らざるをえない」のが実情だ。当座は中国にとって魅力的な取引先に自らを変えていかざるをえない。厳格だった納期を緩和したり、リードタイムを伸ばしたりする企業も出始めている。発注から最短2~3週間で店頭に並べられるからこそ、最新のトレンドを商品にいち早く取り入れ、海外勢に対抗してきた日本企業。納期の緩和は自らの首を絞めることにもなりかねない。

残された選択肢は、大量発注で中国を振り向かせることだ。ロットを増やすため、製造レベルでの協業や再編を模索する企業も出てきそうだ。ブームもつかのま、2011年はファストファッションのサバイバルが始まる。

 

<ダイヤモンド・・・前田剛(本誌)>

アパレル・・・販売はグローバル化、生産は脱中国化が進む

ファーストリテイリングの動向が、アパレル業界の2011年を示唆している。キーワードは「グローバル化」と「脱中国化」だ。

2010年の国内衣料品市場は10兆円前後と見られているが、年々縮小しており、2011年もよくて横ばい、おそらく微減だろう。アパレルメーカーが持続的成長を目指すならグローバル化は避けて通れない。ユニクロも海外展開を加速しており、2011年8月期の業績予想は売上高8560億円(5.1%増)、営業利益1135億円(14.3%減)であるが海外売上高は3割以上の増収増益を見込んでいる。

 

もう一つの課題が生産拠点の脱中国化である。中国の縫製工場は、低価格・高品質・短納期を要求する日系メーカーより、品質基準がそこそこで大量発注してくれる欧米系や中国系を優先している。

各社は急遽、ベトナムやバングラディシュなどアセアン諸国へ生産シフトを模索し始めた。

2011年は今後のアパレルを占う分水嶺となるだろう。

 

海外進出

<東洋経済>

大手が大陸で激突、小売の中国・アジア出店

商社系列が大きな影響、提携強化や再編の芽も

小売業界ではアジア各国への出店が加速しそうだ。7&アイ、イオンをはじめGMSやコンビニエンスストア大手の進出、出店拡大の動きが目立っている。7&アイは現在北京に9店、成都に4店を持つ。傘下のセブンイレブンも香港・マカオ・広州に約1600店舗、北京に92店、天津に4店、上海に48店を擁している。

一方、イオンは中国に35店、マレーシア・タイに37店を展開し、2011年度は日本、中国、ASEANの3事業本社体制を立ち上げる。

ユニーは2012年をメドに上海にショッピングセンター出店を計画、平和堂は湖南省に3店舗を持ち、イズミヤは2011年5月に蘇州へ進出の予定だ。コンビニではローソンは国内では2位だが、海外店舗数(上海中心に300店強)は3位のファミリーマート(9000店弱)に大きく水をあけられテコ入れをはかる。

 

各社がアジア出店に躍起になるのは国内市場の飽和感の裏返しだ。バブル崩壊後も出店競争が続き、1店当たり売上高も減少の一途をたどる。海外進出の成否は、資本提携する商社との連携がカギを握っている面もある。セブン&アイは三井物産が1.8%の出資をしているが、中国進出は伊藤忠と組むなど全方位外交だが、イオンは三菱商事、ユニーは伊藤忠商事とのネットワークを活用している。

進出先での行政との交渉や現地情報の収集などスーパーとコンビニが協業出来ることも多い。国内ではライバル関係にある、ローソンとミニストップ、ファミリーマートとサークルKサンクスなどが、アジア展開では協調、あるいは進出エリアの棲み分けを図ることもあり得ない話ではない。GMSもコンビニも主戦場を中国やアジア各国に移して、意外な合従連衡が実現するかもしれない。

 

 

今回も昨年同様に日経ビジネス、週刊東洋経済、週刊ダイヤモンドの3誌による2011年の予測を整理しお届けする。多方面にわたる項目の中から、国内景気、米国経済、欧州経済、中国経済、為替、そして個別業界として百貨店、スーパー、コンビニエンス、専門店を整理要約した。

それぞれの本誌には文章以外に多くの図表やグラフが掲載されているので、必要に応じ購入してご覧頂きたい。

日経ビジネスは比較的ポジティブに、金融関係のアナリストもポジティブに書いているが、同一テーマであっても誌面により違うことも多い。来るべき年の参考にして頂きたい。

 

来年は兎年である。

ウサギは耳が長く周囲の情報を集め、危険を察知すれば逃げ足は速い。

また、非常に繁殖率が高く、西洋では古代から多産、豊穣のシンボルとされてきた。

「二兎を追うものは、一兎も得ず」ということわざもあるが、「ウサギの上り坂」ということわざの方が新年に向いている。ウサギは坂を上るのが早いことから、物事がトントン拍子に早く進むことのたとえだ。

また、ウサギは飛びはねることから、株価が跳ね上がるとされ縁起がよい生き物だとも言われる。

暗い見通しも多いが、トントン拍子に世の中が良くなることを期待したい。

 

今年1年間お読み頂きお礼申しあげます。

良いお年をお迎えください。

 

以上