レポートNo04 2010.10.29  <倉林 勝>

チエーンストア(平成23年度上半期)決算報告

上位8社の合計は697億円の減収ながら純利益は前期の4倍、1070億円となった。

 

8社全体で販管理費を前期から920億円削減したことが大きい。

上位4社は販管理費を910億円削減したが、純利益の増加は760億円である。売上高や売上総利益の改善は進まず、経費の削減に頼っている。

 

①セブン&アイはコンビニエンスと金融で営業利益の99%弱である。

イトーヨーカ堂は営業赤字だ。

②イオンはGMSの改善が進み、営業収益は横ばいだが、営業利益は前期の17倍となった。

イオン連結純利益は前期147億円の赤字から336億円の黒字に転換した。

 

 


H23年2月期・上半期の連結決算を見ると、増収企業は3社(セブン&アイHD、イズミ、ライフコーポレーション)だけだが、営業利益、経常利益は8社共に増益となり、上期純利益は平和堂を除く7社が増益となった。

前期純利益赤字企業はイオン、ユニー、ダイエー、イズミヤの4社から今期はダイエー、イズミヤの2社となった。

 

8社合計の営業収益は6兆9260億円で前期比99.0%、697億円の減収となる。

売上高は6兆1970億円で前期比98.4%、1008億円の減収である。

売上総利益は831億円減の1兆6217億円で、率は26.2%、前期から△0.9ptsとなった。

販売管理費は920億円減の2兆1315億円で、率は30.8%、前期から△1.0ptsとなった。

営業利益はその他営業収益(主にセブン&アイ、イオン)が310億円増加したことなどを含めて、前期から400億円増加し2192億円となった。率は3.2%で前期から0.6pts増加した。

売上高減と売上総利益率の減による売上総利益830億円の減少を販売・一般管理費の減920億円でカバーし、その差90億円とロイヤリティ収入や不動産収入の増加分310億円が営業利益増加分となった。

経常利益は前期から489億円、128.5%増の2208億円となった。

当期純利益は前期の273億円から約4倍の1070億円となったが、特別利益(主にセブン&アイ、イオン)が245億円増加したことも大きな要因である。

売上高が増加し、売上総利益が増加し、販売・一般管理費が減少し、収益が改善されるという本来の姿からは程遠い決算と言える。

 

8社全体では売上総利益率は前期の27.1%から今期は26.2%、△0.9pts下がった。

ダイエーの30.0%が一番高く、イズミの21.2%が一番低い。イオンの26.1%、セブン&アイの25.6%は平均値から低い。前期からセブン&アイが△0.9pts、イオンが△1.6pts、イズミが△0.5pts下がり、イオンの下げ幅は大きい。価格競争の激しさがうかがえる。

売上総利益額が前年から増加した企業はライフコーポレーション1社(約6億円)だけである。

 

その他営業収益はセブン&アイが90億円、イオンが260億円増加した。

 

8社全体の販売・一般管理費は前期から920億円減の2億1315億円で、前期の31.8%から△0.1pts減の30.8%となった。

率は5社が下がったが、ライフ、平和堂、イズミヤの3社は増加した。イオンが△1.7pts、額で502億円と大きく削減した。セブン&アイの削減額は112億円である。

 

8社合計の営業利益は前期から400億円増加したが、イオン267億円、ユニー71億円、ダイエー33億円、この3社で全体の90%強となる。セブン&アイは12億円の増加にとどまった。

イオンは売上総利益が495億円減ったが、販売・一般管理費を502億円削減し、この分を補い、その他営業収益が260億円増加したことで、267億円の営業利益増となった。

ユニーは売上総利益を40億円、その他営業収益6億円を減らしたが、販売・一般管理費を118億円減らし、営業利益71億円増となった。

営業利益はその他営業収益の増加、販売・一般管理費の削減で生み出している。

 

上期純利益は平和堂を除いて増収となり、赤字企業のダイエー、イズミヤも赤字幅を減らした。

イオンは前期の147億円の赤字から489億円改善し、336億円の黒字となった。

 

自己資本比率はイオン、ユニー、ライフコーポレーションが20%台と低く、セブン&アイは高いものの微減中だ。

 

5社全ての売上高は前年を下回る。既存店売上も落ち込むが、イオンリテールのみ客数が増加する。

客数の落ち込みと客単価の落ち込みが業績を直撃し、イトーヨーカ堂は大きな営業赤字となる。

純利益はイオンが前期の71億円の赤字から3億円の赤字へと改善する。マイカルは68億円の赤字から16億円の黒字へ転換する。イトーヨーカ堂、ヨークベニマルは不明、ユニーは増益となる。

商品別にみても取扱構成比の60%前後をしめる食品が落ち込む。

イオンリテールの食品粗利率がユニーに比べ高いのはPB比率の高さであろうか。

 

コンビニエンス事業が営業収益の40.3%をしめるが、営業利益では85.9%をしめ、金融事業を加えると98.6%となる。スーパーストア事業など他の事業の利益貢献度はわずか1.4%しかない。

セブン銀行のATM設置場所もセブンイレブンに98%設置され、この面でもコンビニを除く事業はセブン銀行から見ても存在感はない。

 

コンビニエンス事業

国内38都道府県で12907店舗を展開、北米6456店舗、ハワイ55店舗、北京を中心に中国93店舗の展開である。

エリアライセンシーは15カ国・地域に19057店舗を展開し、国別店舗数はタイ5511、台湾4722、韓国2449、香港1570店舗等である。

国内の営業収益は2781億円(前期比100.7%)、営業利益900億円(104.0%)、北米7-Eleven,Incの営業収益が7419億円(108.9%)、営業利益160億円(101.5%)である。北米はガソリン価格の上昇でガソリン売上2995億円(127.5%)が貢献する。

国内のチェーン全体売上高は前年比103.0%の1兆4675億円となった。加盟店の売上は1兆4108億円で、これをセブン&アイHDの営業収益に加えると約3兆9700億円となり、これだけの商品を動かしていることになる。

 

スーパーストア事業

イトーヨーカ堂が171店舗、ヨークベニマルが東北地方を中心に167店舗、ヨークマートが首都圏に63店舗を展開する。中国では北京、四川省成都でGMS13店舗、SM1店舗を展開している。

イトーヨーカ堂はスーパーストア事業営業収益の69%を占めるが、32億4800万円の営業赤字である。ヨークベニマルが40億3900万円の営業黒字、ヨークマートを含めた他が26億6200万円の黒字となる。GMSのイトーヨーカ堂がこの事業、ホールディング全体の足を引っ張る。

イトーヨーカ堂は上期に市原、前橋、府中を閉店し、下期に秋田、鳴海、恋ヶ窪(東京)を閉店し、深谷を業態変更する。

 

その他は中国事業である。GMS13店舗、SM1店舗、コンビニエンス93店舗の合計が営業収益447億円になるが、営業利益は減収となった。

イオンの中国事業(香港含む)は営業収益516億円、営業利益18億円である。イオンはGMS28店舗を含む57店舗を展開する。

ユニーは香港の1店舗のみだが、営業収益は54億円である。

 

百貨店事業

百貨店事業の93%を占めるそごう・西武の営業収益は4111億円(前期比97.2%)、営業利益は前期の33億円から3億円と大きく減少した。

店別では池袋本店795億円(前期比101.7%)、横浜店495億円(99.5)、千葉店372億円(99.3%)、神戸店246億円(104.6%)などである。既存店伸び率は△1.2%、商品粗利率は25.7%である。

有利子負債は前期から380億円減少したが、金融関連事業を除く有利子負債の53%、2889億円を持つ。

今年12月25日に有楽町西武を閉店する。

 

フードサービス事業

営業収益は下がるが、不採算店舗28店を閉鎖するなどで営業利益は前期の△7億円から3億円の黒字となった。

 

金融関連事業

ATMの設置台数はセブンイレブンに13818台、セブン&アイ関連に418台、グループ外に643台、合計14879台を設置している。

貸金業法改正によりキャッシング取引件数が減少し、1台当たり1日平均利用回数は前期比0.7件減少し115.4件となった。

電子マネーの「nanaco」の発行件数は前期末から216万件増加し、1196万件になった。イオンの「WAON」は1590万枚である。

金融事業の営業利益は全体の12.7%をしめ、コンビニエンスとこの事業でセブン&アイは成り立っている。

 

連結業績は売上総利益が197億円減少するが、その他営業収益が97億増加、販売・一般管理費が112億円減少、伊藤名誉会長から研修施設に対する70億円の寄贈で特別利益が増加し、減損損失の減で特別損失が50億円減したことなどで、上期期純利益は187億円増の624億円となった。

 

セブン&アイは

*コンビニエンス事業の拡大などの力を入れる。北京や上海で2015年までに1000店舗を出店する計画を立てる。また、国内全店を対象に高齢者や単身者を対象に105円均一の生鮮野菜などの宅配事業も計画する。

アメリカではアイオワを中心とした中堅コンビニのケーシーズ・ゼネラルストア(1700店展開、年商46億ドル)を買収するとの話も出ている

*ネットスーパーの拡大とは別に、「仮想商店街」事業への参入も計画され、取引先を中心に自社サイトを開放し、1000店舗規模の商店街を作る予定。09年度300億円から売上を2012年には1000億円程度まで拡大する計画である。

ネットスーパーは扱い店舗を150店まで広げ、配送回数を1日5回から6回に増やし、今年度末には前期比1.5倍の300億円まで拡大する計画である。

*スーパーストア事業は閉店と業態変更(ディスカント型やホームセンター型)をし、雑貨専門店などを立ち上げるが、本体のイトーヨーカ堂の大きな改革は見えない。

GMSとは別に人口の都心回帰をとらえて、各社都心での小型店舗開発に力を入れるが、セブン&アイHDでも小型店の展開を計画する。大都市中心に5~700㎡の店舗に生鮮や総菜など食品中心の店舗を3年で100店舗計画し2000億円の売上を目指す。

*全体では「セブンプレミアム」などのPB、全世界のコンビニを含む全店舗で扱うPBなどに力を入れる。

 

イオン連結の売上は微減であるが、営業利益、経常利益、純利益は大きく増加した。純利益は前期147億円の赤字から480億円強改善し336億円の黒字となり上期としては過去最高の利益となった。

売上総利益率は前期から△1.6ptss下がり金額でも495億円減らした。

しかし、その他営業収益が260億円増加、販売・一般管理費が502億円減少、営業外費用の投資損失が大きく減少し90億円の減少などで経常利益は355億円増加し、倍増となった。

また、タルボット売却による売却益177億円を特別利益に計上し、前期計上した利息返還損失引当金繰入額(新貸金業法によるもの)140億円が今期はなく、特別損失も前期から236億円減少した。

そのようなことから、純利益は大きく伸びた。

売上、粗利率、粗利額の増加によるものではないが、タルボットや利息変換損失引当金など負の要素が解決し、経費を大幅に削減させたことは評価したい。

販売・一般管理費は前期上期に185億円減らし、下期には587億円減らし、通期では772億円減らしている。今年、下期は前年587億円と大きく減らした経費を更にどこまで減らせるかがカギとなりそうだ。

 

主要事業別に見ると、足を引っ張り続けたGMS事業が前期の営業、経常、純利益赤字から大幅に改善され純利益は前期170億円の赤字から3億円の黒字へと転換した。専門店事業はタルボットの売却で黒字化し、総合金融事業も前期の62億円の赤字から38億円の黒字へと転換した。ITデジタルビジネス事業を除き純利益は黒字となった。

地域別に見ると北米の売上はなくなったが、アジア等の売上は全体の5%強となり、純利益は11%強となった。主に、中国(香港含む)、タイ、マレーシアで展開している。中国ではGMS28店舗、SM6店舗、その他23店舗を展開、タイではSMを11店展開、マレーシアではGMS22店、SM4店を展開している。

カルフールが東南アジア(タイ、マレーシア、シンガポール)から撤退すると予想され、展開する約60店舗をイオンが買収するのではないかと観測されている。

 

前期まで増え続けてきた有利子負債もこの上期は、前上期から1080億円減り、前期末から225億円減少した。特に前期に1000億円の社債を発行したことにより、短期借入金は前期上期から1650億円減少し695億円となった。まだ多いがこの面でも改善されつつある。

 

前期の大赤字から、わずかでも黒字に転換したことがイオン連結の好結果となった。

ディベロッパー事業と米国タルボットの稼ぎをGMS事業が食いつぶさなければイオン連結は好業績であったが、タルボットの大赤字、GMSの大赤字が続いてイオンを低迷させてきた。タルボットは売却し、GMSが赤字から脱出できればイオンとしても落ち着くであろう。

イオンリテールは若干の赤字ながら経費を52億円削減し前期より68億円改善した。万年赤字のマイカルは84億円改善し16億の純利益を出した。

 

現在、イオンリテールはGMS245店舗、SM5店舗を含めて457店舗を展開し、マイカルはGMS90店舗を含めて103店舗を展開、イオンマルシェ(旧カルフール)はGMSを6店舗展開している。この3社は今期末までに合併し(イオンリテールが2社を吸収)店舗名を「イオン」に統一する予定である。

人事、総務、経理など間接部門の統合合理化で400億円の経費削減、商品調達や商談の一本化で原価率を改善し粗利額100億円を生み出し、合せて500億円の統合効果を見込んでいる。統合されれば2兆5000億円規模となる。今回イオン北海道、イオン九州は上場しているため合併は見送られたが、いずれは統合されるであろう。

 

GMS活性化の大きな動きとして専門店化がある。

自社運営の専門店を10種程度開発し、全国420か所のGMSへ導入する計画で、売上高営業利益率3%を目指す。

自転車、ペット、手芸、生活雑貨、酒、園芸、高齢者向け商品、衣料品などを計画中。

*30~40歳台向けのPBアパレル「トップバリュ・コレクション」をSPA手法で立ち上げ、3年後350店舗、600億円の売上を目指す。

*ペット販売のペットシティは現在の200㎡程度の店舗から1000~1300㎡の大型店に変更し、60店程の新規店舗を展開する予定。

*自転車のイオンバイクは路面にも大型店を出店し、200店舗規模、年商150億円を目指す。

 

その他

*PBのトップバリュは1品種年間販売額10億円のメガヒット商品を100アイテムまで拡充することを目指し、上期の売上高は2150億円、前期比101.2%となった。

*電子マネー「WAON」は発行枚数1590万枚、利用可能箇所94000箇所、決済金額は前期比179.4%の3970億円となった。

*イオンディライト(総合ビルメンテナンス事業)とチェルト(バックオフィスサポート事業)は総合ファシリティーマネージメントサービス企業へ進化するため9月1日付けで合併した。(存続会社イオンディライト)

*アパレル専門店のコックスとブルーグラスは8月21日に合併した。(存続会社はコックス)

*イオンとマルナカ、山陽マルナカ、三菱商事の4社は商品・物流・IT分野等で協業し包括的業務提携を8月11日に締結。マルナカ、山陽マルナカは中四国を中心に200店舗を展開し、年商は3300億円規模である。

*小型店の「まいばすけっと」は今期35店を出店し、148店舗となった。コンビニの跡地利用などを積極化している。

 

ユニー連結業績は営業収益、売上高と減少し、売上総利益もその他営業収入も減少する。営業利益率はセブン&アイ、イオンが低下する中で0.2pts上昇するが、営業総利益は47億円減少する。

販売・一般管理費は118億円減少し、前期計上の棚卸資産評価損41億円が今期はなくなり特別損失は49億円減少した。

結果として純利益は前期26億の赤字から、32億円の黒字に転換した。

 

現在ユニーは231店舗を展開、香港ユニーは1店舗のみである。

ユニーも中国を目指す。中国の食品最大手の頂新グループと合弁会社を設立し、2010年上海に出店し2020年をメドに20店舗1000億円を計画する。合わせて香港も10店舗とし、日本からのテナントも衣料品を中心に誘致する計画だ。

ユニー単体も人件費や水道光熱費を下げ販売・一般管理費は68億円、6.2%減少し、営業利益、経常利益を大きく改善した。

既存店売上は前期の93.9%から97.2%まで改善されたが、7月を除き毎月前年割れとなっている。

衣料品95.0%、住関連97.0%、食品97.7%で買上客数98.7%、客単価98.4%となった。

粗利率は衣料品36.6%、住関連27.0%、食品19.5%、全体23.4%である。

 

その他

*サークルKサンクスは5435店舗の展開、非連結のエリアフランチャイザーを含めると6322店舗の展開となる。

*赤字を続けた専門店はやっと黒字に転じた。純利益はさがみ△89百万円赤字(前期△57百万円)、パレモ3億56百万円黒字(△3億7千万円)、鈴丹1億88百万円黒字(△2億42百万円)、モリエ△2億45百万円赤字(△6億19百万円)である。

 

(F)ダイエー

営業利益は110億円減少するが、販売・一般管理費を143億円減少させ、純利益は前期45億円の赤字から今期16億円の赤字とした。

有利子負債は前期末から81億円減少し、708億円まで減少した。

 

(G)まとめ

連結業績は改善されたが、コンビニエンスや金融、ディベロッパーなどに負っている。

GMSの改善が急務と言われながら、前期に比べれば良くなってはいるが収益はわずかだ。

競争激化の中、売上は減少し、売上総利益率も低下し、売上総利益額も減少する。

それを、特に人件費等の削減で販売・一般管理費を下げてバランスを取っているのが現状だ。

GMS単体でイトーヨーカ堂もイオンリテールもダイエーも純利益は赤字、ユニー、マイカルのみが黒字となった。GMSの改善はまだ遠いようだ。

この上期セブン&アイ、イオン、ユニー、ダイエーの4社連結で販売・一般管理費を約910億円減らしたが、純利益の増加は約760億円でしかない。

経費の削減はこれからも続くであろうが、削減幅は低下するであろう。その時、売上高と売上総利益額を高めることができなければ、GMSの終りがさらに早まるであろう。

 

PBの販売強化、衣料のSPA化、特定部門の専門店化、小型店の都心部出店、組織の統合、業態転換、M&A、中国への進出など計画は多いが業績に反映するまでの時間は長い。今存在するGMSの店舗をどのようにするのか、デフレで販売価格は低下し、競争激化の中で先が見えない状況が続く。

 

以上